菰野の女子マネージャー・萩未空さん「母と同じ道を辿り、誰よりも頼られるマネージャーに」
春1回、夏2回の甲子園出場経験を持ち、オリックス・西 勇輝投手、巨人・辻 東倫内野手などプロ選手も送り出している菰野高校。今回は、その実力ある野球部のマネージャーとして、たった一人でサポート役に徹する1年生の毎日に、フォーカスしていく。
母も菰野のマネージャーだった!?面影残す娘が同じ道を歩む
三重県・菰野高校野球部。現在1・2年生で構成されるチームは、計33人を数えるのだが、彼らのサポートを一身に担うマネージャーがいる。彼女の名前は、萩 美空(はぎ・みく)さん。萩さんの母・千夏さんは、同じく菰野のマネージャーを務めた「先輩」で、親子2代で野球部を支える仕事に身を捧げている。
就任30年の戸田 直光監督によると、萩さんはお母さんにそっくりだそうで、「仕草が重なって見える」という。母の面影を持った萩さんは、かつて母が進んだ道をなぞり、同じ場所にたどり着いた。
もともと野球が好きだったという萩さんは、中学時代は陸上部。高校進学を機に、前述の通り、お母さんが菰野のマネージャーだったことがきっかけで、同校のマネージャーに就任した。先輩はおらず、3年生がいたこの夏も、一人で役割を果たしていた。
「支えになることは、なんでもしようと思っている」と話す萩さんの仕事は、その言葉の通り、多岐に渡る。洗い物や掃除にゴミ捨てといった環境整備の面はもちろん、ノックではボール渡し、試合になればスコアラーを務めている。一人で担っているだけに、作業の量もそれだけ多くなる。他のマネージャーと連携をとることもないため、気配りには一層の自信を持っているそうだ。
ちなみに萩さんのおすすめマネージャーアイテムは、容量の大きいポーチ。
「ばんそうこうなど、いろんなものを入れています」というアイテムを常備し、グラウンド内外にアンテナを張り巡らせ、必要があればすぐに動きだす。
マネージャーを始めて7か月が経った。その時間の中で濃密な毎日を送り、数多くの出来事を経験した。その中で、萩さんにとって初めてベンチに入った公式戦、秋季三重県大会・津田学園戦が、最も記憶に残る試合になった。
「スコアラーとしてベンチに入れて、とても嬉しかったです。本当に緊張していたんですが、ベンチから見える景色が輝いて見えました」と萩さん。いつもサポートしている選手たちと同じグラウンドレベルに立って、ともに戦う感覚を味わえた万感の思いが、このコメントににじみ出ている。
[page_break:感謝やねぎらいの言葉が一番の力になる]感謝やねぎらいの言葉が一番の力になる
複数のマネージャーがいるチームも多い高校野球の世界。それほど、雑務をはじめとしたマネージャーの仕事は、量が多い。これを一人でこなすというのは、なかなか大変なこと。
そんな中で、厳しい毎日を乗り越える糧になるのは、感謝やねぎらいの言葉だ。
「(監督や選手から)『ありがとう』と言われたことが、一番思い出すと頑張れる言葉です」と萩さんは言う。チーム内からだけでなく、グラウンドに顔を出して練習などを見守る近所の方々にも、一人で奮闘する萩さんの姿は知られており、そういった人々からかけられる「一人で頑張ってえらいね」という褒め言葉も、戦う糧になる。
菰野・橋本 海主将に、萩さんについて聞いてみると、「一人で大変だと思います」と最初にいう。選手ももちろん、たった一人でサポートする彼女の大変さは理解している。
「キャプテンの僕にいろいろと確認をしてくれるので、僕が忘れていることも思い出させてくれたりして、本当にいいマネージャーだと思います」
「頼りにされるマネージャー」。萩さんにこれからどんな存在になっていきたいかを聞いてみると、そのような答えが返ってきた。最も選手を近くで見守る存在であるマネージャーの仕事を、たった一人でこなす萩さんであれば、きっとそうなれるであろう。高校野球は、フィールドでプレーする選手だけでなく、チーム全員が作り上げるものだ。彼女のような献身的な働きをしてくれる人に、感謝の気持ちは忘れないように持っておきたい。
(文・編集部)
菰野高校野球部のみなさん、ありがとうございました!