Column

鹿児島地区記者・政 純一郎氏が選ぶ今年のベストゲームTOP5

2015.11.12

名門・鹿児島実の復活と奄美勢の躍進

 最も印象に残ったのは名門・鹿児島実の復活と、鹿児島大島、徳之島の奄美勢の躍進だった。11年春センバツ以降、甲子園から遠ざかっていた鹿児島実夏の鹿児島大会を制した。秋の県大会も制し(試合レポート)、九州大会でも4強入りし夏春連続出場に大きく前進した。高校野球誕生100年の年に、学校創立100周年の節目を迎えた名門の復活はインパクトがあった。鹿児島大島の九州大会初勝利徳之島8強入りなど奄美勢の活躍も顕著だった。

5位:春季鹿児島県大会決勝 れいめいvs樟南

春季大会で優勝したれいめい

20年ぶりの県大会制覇

 このところ、神村学園鹿屋中央鹿児島城西鹿児島情報などに押されてなかなか上位に勝ち上がれなかったれいめいが20年ぶりに県大会の頂点に立った。

 れいめいといえば強力打線の印象が強いが、この試合はエース杉安 浩(3年)の好投と粘り強い守りが勝利へ導いた。中盤のピンチの場面でチェンジアップを駆使して切り抜けていくシーンは圧巻だった。樟南畠中 優大浜屋 将太の2年生左腕も好投し、勝負は1対1のまま延長戦へ。延長10回、9番・若田 礼大(3年)の犠牲フライでサヨナラ勝ちし、20年ぶりに優勝旗を手にすることができた。

 この大会ではリードオフマンの火ノ浦 明正主将(3年)が4本塁打を放ち、一気に注目の強打者になったのも印象深い。

試合レポート

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[page_break:4位:秋季鹿児島県大会準々決勝 鹿児島実vsれいめい / 3位:秋季九州地区大会1回戦 大島vs神埼清明]

4位:秋季鹿児島県大会準々決勝 鹿児島実vsれいめい

れいめいの太田 龍投手

ハイレベルな投打の応酬、九州の伏線に

 秋の新チームの試合とは思えないほど、ハイレベルな投打の応酬に見応えがあった。身長188センチ、最速140キロ台の直球を持つれいめいの長身投手・太田 龍(2年)と鹿児島実の主砲・綿屋樹主将(2年)との直接対決は、チームの勝敗を度外視して見入ってしまうほどの迫力があった。

 4度あった直接対決は2三振、1ライナー、1四球で太田に軍配は上がったが、四球で出た8回に綿屋は意表を突く三盗を決め、貴重な3点目をアシストしている。鹿児島実は、太田とは好対照の軟投派、右下手の谷村 拓哉(2年)の起用が当たり、1点差で強力なライバルに競り勝った。ちなみにこの試合が、九産大九産(福岡)を相手にした九州大会準々決勝で、軟投派の谷村が打線を抑え、大会屈指の右腕・梅野 雄吾(2年)を攻略する伏線にもなった。(試合レポート

3位:秋季九州地区大会1回戦 大島vs神埼清明

九州大会初勝利を挙げた大島

歴史的な離島勢の九州大会初勝利

 14年のセンバツ出場に代表されるように、このところの躍進著しい鹿児島大島が地元開催の秋の九州大会で初勝利を挙げた。過去137回の九州大会の歴史の中で、鹿児島の離島勢の九州大会出場は第78回大会の屋久島、第117回大会の徳之島、第134回大会の鹿児島大島に続く4回目だが、その中でも初めて白星を手にした歴史的な一戦だった。

 内容的にもエース渡 秀太(2年)が神埼清明打線を5安打、三塁を踏ませず、守備も無失策で完封。渡をなかなか援護できなかった打線も8回に4番・上原 勇人(2年)、5番・太月 幸(1年)のタイムリーで3点を挙げ、佐賀2位校を堂々と寄り切った。

 続く臼杵(大分)戦(試合レポート)では、序盤に4点のビハインドを背負いながら、中盤1点差まで盛り返し、終盤は完全に主導権を握っていたが、あと一押しできず8強入りは逃したものの、鹿児島大島の成長ぶりを感じた大会だった。(試合レポート

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[page_break:2位:第97回鹿児島大会準決勝 鹿児島実vs神村学園 / 1位:第97回鹿児島大会4回戦 徳之島vsれいめい]

2位:第97回鹿児島大会準決勝 鹿児島実vs神村学園

橋本 拓実投手(鹿児島実)

宿命のライバルを下す

 夏の甲子園を勝ち取った鹿児島実の試合は、投手戦を制した準々決勝出水中央戦、劇的な勝利だった決勝鹿児島城西戦と印象深い内容が多いが、大きなターニングポイントになったのはこの一戦だろう。14年夏準々決勝のコールド負け、12年夏決勝の大敗と、このところ鹿児島実にとって神村学園は立ちはだかる大きな壁だった。この夏までの県大会では無敗で勝ち進み、第1シードだった神村学園との準決勝は「事実上の決勝戦」と目されていた。

 鹿児島実橋本 拓実(3年)、神村学園北庄司 恭兵(3年)、両右腕エースの好投で、接戦になった。4回に鹿児島実が先制し、7回裏にスクイズとタイムリーで2点を加える。神村学園も1点差まで詰め寄るが、最後は鹿児島実が好守でしのぎ、宿命のライバルを下して夏の甲子園を大きく手繰り寄せた。(試合レポート

1位:第97回鹿児島大会4回戦 徳之島vsれいめい

野崎 龍正投手投手(徳之島)

「面白く、大胆に」の徳之島野球、結実

 今年最も印象に残ったチームは鹿児島実だが、ゲームで一番心動かされたのがこの一戦だ。ノーシードの徳之島覇者で第3シードのれいめいを下して7年ぶりに8強入りを果たした。勢いに乗った番狂わせではなく、「面白く、大胆に」と田村 正和監督が掲げた徳之島野球が結実し、島のチームでもやれることを示した一戦だった。

 初回に4番・立山 真輝(3年)の先制タイムリーを皮切りに、3回までに5点を先取。エース野崎 龍正(3年)のコーナーを丁寧に突く好投と堅守でれいめいの強力打線を抑えた。終盤追い上げられるも踏ん張って、9回にダメ押しの2点を加えた。最後はれいめいの注目打者・火ノ浦 明正(3年)を打ち取って勝利を決めた。

 準々決勝鹿児島城西に敗れて、夏の甲子園を勝ち取る難しさを思い知らされた一方で、「こんな野球ができれば、徳之島の甲子園も夢ではないかもしれない」と思わせるほど、力強さを感じた。(試合レポート

 このところ少子化などの影響もあって、野球部員も少なくなり、連合チームの参加も増えた。強豪私学と公立校の差が徐々に広がりつつあるのを感じる一方で、鹿児島大島や徳之島のような地域的なハンディーを抱える公立校が健闘しているのも今年の鹿児島の特徴だ。上を目指すという情熱のエネルギーは、我々見るだけの人間の予想など軽く覆すパワーを秘める。そんなチームが2016年以降も出てくることを期待したい。
(文・政 純一郎


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・【11月特集】オフシーズンに取り組むランメニュー

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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