【侍ジャパンU-18代表コラム】森下 暢仁 九州の豪腕が施した「メンタル改革」
侍ジャパンU-18代表は8月31日(月)、「第27回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」第4戦で、チェコに15対0と7回コールド快勝し4連勝。1stラウンドA組1位でのスーパーラウンド進出を決めた。今回はその原動力となる3安打無四球12奪三振完封勝利を収めた森下 暢仁(大分商<大分>3年)の横顔と、大会中に修正を施した「メンタル改革」について追っていく。
全貌見せた「豪腕」が生まれた理由
1stラウンドのチェコ戦で12奪三振の好投を見せた森下 暢仁(大分商)
180センチ68キロとすらっとした長身。長い手足。肩、肘の柔軟性を生かしたテイクバックが大きく、左足を大きく踏み出した独特のフォーム。そこから外角低めに突き刺さるスピンがかかった最速148キロ・常時140キロ~145キロ前後のストレート。加えてスライダー、チェンジアップ、カーブの制球力。チェコ打線はそんな右腕に翻弄されっぱなしだった。
今年に入ってから東海大相模との練習試合で、10奪三振、無四球2失点完投。この夏の大分大会では決勝戦で明豊に0対1と惜しくも甲子園出場は逃したが、計5試合で42イニングを投げ、わずか4失点。今秋のドラフト上位候補と絶賛される「九州の豪腕」森下 暢仁(大分商<大分>3年)は、この試合でついにその全貌を見せた。
そんな森下のストロングポイントは「投手を始めた時からこのフォームで、高校時代は指導者からフォームを指導されたことはないです」と語る理想的なフォーム。そして自らも認識している天性の肩関節、ひじ関節の柔らかさである。まさに投手として生まれてきた男。ただ、そこを活かす術は日々探究を重ねている。
まずはスピンがかかったストレートの投げ方。
彼は「上から強く叩く意識でリリース」することを常に留意している。ブラジル戦で紹介した上野 翔太郎(中京大中京<愛知>3年:上野投手記事)の「あまり上半身を意識せず、踏み出す左足の使い方を意識して、伸びのある直球を生み出す」とは別のアプローチ法。そこを支えるのは普段のキャッチボールだ。
「遠投はボールがシュート回転してしまうのであまりやらないのです。僕は50メートルぐらいの距離から上から振り下ろす意識で。ワンバウンドになってもいいので、どれだけ低い軌道で強いボールを投げられるかを意識してやっています」
その積み重ねが「キャッチャーミットまでスッと伸びていくような軌道で投げることができる」ストレートの完成に。さらに森下は「左脚を上げた時のバランスが悪いと、それで体が突っ込んで、垂れたストレートになってしまう。頭が突っ込まないことには特に気をつけています」と投球フォームのチェックにも怠りはない。
天性の身体をさらに活かす技術の集積。これが九州の豪腕が生まれた理由である。
対戦国はどんな国?!
組み合わせと応援メッセージは下記リンクから!
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精神状態を整え、チェコ戦の快投へ
大学日本代表との壮行試合のマウンドに上がる森下 暢仁(大分商)
が、最高のパフォーマンスを発揮するには「技術」「体力」ばかりでなく「精神力」が不可欠である。今大会前、森下はそこに悩みを抱えていた。
8月26日(水)、侍ジャパン大学代表との壮行試合で憧れの侍ジャパンユニフォームを身にまとい、はじめて[stadium]阪神甲子園球場[/stadium]のマウンドに立った森下は「レベルの高い大学代表と対戦することで緊張のあまり、リリースポイントが乱れてしまった」と振り返るように、本来のコントロールがなく1回3失点。「このままでは出番がなくなる」。焦りが支配するのも当然の苦い結果だった。
ここで森下は心を整えにいく。「まずは気持ちを落ち着かせ、マウンドで1球1球、大事に投げる」。
そして迎えた8月28日(金)1stラウンド初戦。
オーストラリア相手に7回表から2番手で登板し1回2奪三振の好投。この時、「壮行試合ほどの緊張感もなく、しっかりと試合に入って投げることができた」ことで、3日後のチェコ戦先発登板決定も「朝に先発を告げられたとき、投げたくてうずうずしていたので嬉しかったです」と気合十分で臨むことができた。
精神状態の不安がなくなれば、体力と技術へすぐに目を向けられる。
チェコ戦は1回裏一死一塁から3番・フルプをカットボール、4番・クラウスもアウトローに決まる140キロのストレートでいずれも空振り三振に斬った一方で「伸びのあるストレートが投げられず、ボールが相手打者の前で垂れてしまっている」と自覚した森下はすぐに西谷 浩一監督と遊撃を守っていた津田 翔希(浦和学院<埼玉>3年)に助言を求めにいく。はたして2人からの指摘は自身の想像通りだった。
「頭が突っ込んでいるぞと助言をいただきました」。となれば修正は簡単である。味方の攻撃途中にキャッチボールを行い、4回裏からはフォームの感覚をつかみ始めた森下。スピードガンは常時130キロ後半ながら、その軌道はキャッチャーミットまで伸びていく彼本来のストレートであった。
「チェコの打者の反応を見てストレート一本で行けるかなと思いました。尻上がりに良くなっていて、スピンが非常にかかった素晴らしいストレートでしたよ」
3回からマスクを被った郡司 裕也(仙台育英<宮城>3年)も、その状況を立証する。
「ようやく自分の理想に近いストレートを投げることができた」7回裏は二者連続空振り三振で完結。積み上げた奪三振は「12」。無四球、3安打完封。かくして5日間の「メンタル改革」を経た森下は、最高の形でスーパーラウンド進出への道筋を作ったのである。
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頼れる仲間と「世界一」へ階段昇る
(左)伊藤 寛士(中京大中京)と森下 暢仁(大分商)のバッテリー
第一関門を乗り越え、笑顔があふれる侍ジャパンU-18代表ベンチ。森下の笑顔もその中に溶け込んでいた。
甲子園不出場組のみならず九州地区からもただ1人の選出。「当初は不安もあった」と本音を明かしてくれた森下だが、チームメイトの気遣いで今ではすっかりと打ち解けて話せるように。このチェコ戦での快投でそれらの不安も完全に払拭された。
「今日もフォームが修正できた4回以降から自分の中でテンポも良くなり、前向きに投げることができました。スーパーラウンドでも打たれることを恐れずに勝負していきたいと思います」。
九州を席巻した豪腕には完全に自信の表情が戻っている。
となれば、韓国、キューバなどの打力が高い強豪国との対戦が予想されるBグループ上位3カ国とのスーパーラウンドでもきっと彼の存在は欠かせないものとなるはず。
緊張の中で立った聖地とは違った景色を見るために。森下 暢仁は頼れる仲間と共に侍ジャパンU-18世界初戴冠への階段を昇っていく。
(文=河嶋 宗一)
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