Column

剛腕・高橋 純平、復活なるか?不完全燃焼に終わった7月の悔しさを晴らす!

2015.08.25

 不完全燃焼で終えた最後の夏の悔しさを晴らす機会が訪れた。今年の高校生を代表する剛腕・高橋 純平県立岐阜商)。ドラフト上位候補に挙がる高橋に対し、注目度抜群の7月5日の初戦、本巣松陽戦では多くのスカウト、報道陣が球場に訪れたが、高橋の登板はなかった。温存かとも思われたが、2回戦以降も登板がなく、何か異変があったのか?と騒ぎになった。実際には、高橋は大会前に左太もも裏の肉離れで登板できない状態になっていたのだ。

 高橋が登板したのは準々決勝の中京戦のみであった。それでもU-18首脳陣は高橋を高く評価していた。今回、代表選手に選出されたのも、ケガが重度なものではなく、本戦に間に合い戦力になると判断したからであろう。

 そして今回のケガに対しては、スカウトの評価も揺らぐことはなく、ドラフト上位候補として期待されている。そんな高橋の魅力をもう一度振り返っていきたい。

肩・肘の柔らかさから見る高橋 純平の自己管理力の高さ

高橋 純平(県立岐阜商)

 高橋が評価されている1つの理由として、肘を支点とした柔軟性のある投球フォームが挙げられる。テイクバックの大きさを見ると実に可動域の広さを感じる。以前、高橋に取材した際、なぜ可動域が広いのか、その理由を本人に尋ねてみたところ、次のような返事が戻ってきた。

「小学校の時、お父さんに投球後に必ず肩甲骨のストレッチをしろといわれて、そこから欠かさず行っています」

 プロは可動域が広い投手が評価されやすい。もちろん体の硬い選手が悪いわけではないが、高校時代から肩の可動域の広さを評価されてきたオリックスのエース・金子 千尋2015年インタビューや、登板前に「マエケン体操」を行って肩甲骨の柔軟性を促し、6年連続規定投球回に達している前田 健太2012年インタビュー2013年インタビュー、手の甲を腰に当てた状態で、両ヒジを真正面に向ける驚異的な柔軟性を持つ大谷 翔平関連記事など、プロで活躍する投手は肩、肘などの関節の柔軟性が目につく。

 また、この柔らかさというのは、持って生まれた部分もあるが、柔軟性を高める取り組みをどれだけ継続して行ってきたかにもよるので、その投手の自己管理能力も垣間見ることができる。高橋は、小学校からここまでしっかりとケアを行ってきたことが今のパフォーマンスにつながっていると考えることができるので、自己管理ができる投手として高く評価できるだろう。

 プロは、才能が高い投手をピックアップする。しかし活躍できるか否かは安定して成果を出せるかにかかっている。成果を出し続けるには、普段の準備が大切である。高橋は秋、春としっかりと結果を残した。それは並外れた才能だけでできたわけではない。制球力、ストレートの伸びを追求するために、開きを抑え、脱力をテーマにした投球フォーム改造、また球数を少なくすることを目標にするなど、投手として大事なスキルを日頃の練習から積み重ねてきた。高橋を追いかけているスカウトは、試合の投球だけではなくそういった取り組みを見てきているから、評価しているのであろう。能力だけでなく、取り組む姿勢も高く評価しているのではないだろうか。


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多大な可能性を秘めた伸びしろ

高橋 純平(県立岐阜商)

 もう1つ、高橋の長所として伸びしろがあるという点が挙げられるだろう。近年の高卒1年目から活躍している投手といえば、3年連続二桁勝利を挙げた藤浪 晋太郎(阪神タイガース)や、1年目から先発ローテーション入りし、今年はクローザーで活躍する松井 裕樹(東北楽天ゴールデンイーグルス)となるが、高橋はこの2人ほどの即戦力感はない。だが、3年経てば、プロの一軍でも活躍できる潜在能力は十分に秘めている。

 また、肩と肘の故障歴がほとんどないのも魅力的だ。7月に痛めた左太もも裏の肉離れは致命的ではなく、しっかりと治療をすれば問題ないものだ。ケガを少なく、順調に素質を伸ばすことができたのは、先ほど説明したように肩、肘の関節の柔軟性があることや、ケアの能力の高さだけではなく、高橋を極力、登板過多にならずに調整させた県立岐阜商首脳陣の采配の賜物だろう。

 また、高橋は1試合あたり100球以内に収めたいという考えがあるという。
「球数を少なくすること」は当たり前の様に語られていることだが、高橋は、昨夏の準決勝の大垣日大戦で力み過ぎて制球力を乱し敗れた経験から、脱力した投球フォームにこだわってきた。選抜でのピッチング内容も、すべて全力のストレートを投げるのではなく、初回だけ150キロ級のストレートを見せて相手に速いと思わせた後、140キロ前半のストレートとカーブを軸に投球を組み立て、要所では140キロ後半のストレートで押して打ち取るなど頭脳的な投球を見せていた。

 そして、結果的に球数を少なく収めることができていた。この考えを貫く限り、高橋は今後も球数を少なく収める投球ができるだろう。ここまで故障がないのは大きなプラス材料だ。

 一度、肩、肘の重度な故障をしてしまうと、治ったとしてもなかなか球速が戻ってこない可能性が高く、復調するのは稀だと思った方が良い。実際に、高校時代に重度な故障をした後に復帰を果たしても、故障前の状態になかなか戻らない投手を多く目にしている。

 高橋は故障歴がなく、現時点ではまだ体が完全に出来上がっていない。より専門的な環境、専門的な知識を持ったトレーナーの下で取り組んで肉体的な進化を遂げれば、どんな投手になっていくのか、想像するだけで将来が楽しみである。もしかしたら日本球界を代表する剛速球投手になるかもしれない。そんな期待感をスカウトは持っているに違いない。

 22日からU-18代表の合宿が始まり、ブルペンで力強い投球を見せる高橋 純平。NPBのスカウトは練習から視察し、高橋の投球の様子を凝視している。

24日から本戦へ向けての強化試合も始まっているが、一番の注目は26日の大学日本代表との壮行試合で登板するかどうか。これまでの実績、パフォーマンスを考えると、右のエースとしての働きが期待される高橋なだけに、今年の高校生を代表する投手だと思わせる投球をぜひ見たいものである。

(文=河嶋 宗一

関連記事
【インタビュー】県立岐阜商業高等学校 高橋 純平投手・前編(2015年03月12日公開)
【インタビュー】県立岐阜商業高等学校 高橋 純平投手・後編(2015年03月13日公開)


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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