Column

【記録トリビア 本塁打編】 甲子園で圧巻の本塁打を見せてきたスラッガーたち

2015.08.09

 甲子園は数々のドラマを残すと同時に記録も残っていく。今回は記録の面から甲子園を振り返っていきたい。まずは通算本塁打編からだ。

毎回圧巻な本塁打を見せる清原、強烈なインパクトを与えた桑田

PL学園時代は打者でも活躍した桑田真澄氏

 夏の甲子園で最も本塁打を打ったのは9本塁打の清原和博選手(PL学園)である。振り返れば、甲子園の清原は、圧巻の本塁打を見せてくれる。

 1年夏(1983年)から名門・PL学園の4番に座り、甲子園初本塁打は、決勝の横浜商戦。逆方向への本塁打だった。1年生で主軸として出てくる1年生は毎年いるが、ライトスタンドは浜風の影響が強く、押し戻されやすく、フェンス手前で失速することが多い。それだけに1年生ながら逆方向に打ち込んだ清原の打撃技術は傑出していた。

 清原は2年夏(1984年)享栄戦で3本塁打を放つと、3年夏(1985年)高知商で放った本塁打は中段まで飛び込む一打で、最も飛んだ当たりであった。この一発で勢いに乗った清原は、準決勝の甲西戦で2本塁打を放つと、さらに決勝の宇部商戦で2本塁打を放ち、一大会5本の本塁打は今でも破られていない記録となっている。

 夏では3年連続で本塁打を放ち、1本→3本→5本と本塁打が多くなっていること。清原選手の本塁打を振り返れば、打った瞬間、文句なしの当たりだけではなく、右方向への本塁打が多いことも見逃せない。改めて清原の技術の高さが分かる。
プロ入り後も、高卒1年目から31本塁打。そして通算525本塁打と多くのアーチをかけた清原。この伝説を破る大打者は現れるのだろうか。

 2位は4本塁打。4本打っている選手は桑田真澄選手(PL学園)、藤井進選手(宇部商)、平田良介選手(大阪桐蔭)、廣井亮介選手(智辯和歌山)、北條史也選手(光星学院)、森友哉選手(大阪桐蔭)と6人いる。

  清原とともに甲子園を盛り上げた桑田は、「KKコンビ」と呼ばれるようになり、絶大な人気を誇ったが、最初に甲子園のファンに強烈なインパクトを与えたのが桑田であった。1年生にしてエースの座を獲得した桑田投手は準決勝まで快投。1年生投手が甲子園4強まで導くだけでも考えられないが、すごかったのは、徳島池田との準決勝だ。桑田は、徳島池田の水野雄仁投手(巨人)の剛球を打ち返し、本塁打。さらに強打の徳島池田打線を5安打完封勝利を挙げる。その後、決勝でも勝利し、1年生ながら甲子園優勝を経験する。

 現代の例えでいえば、1年生投手が夏春連覇をして勢いにのる大阪桐蔭を完封勝利と合わせて本塁打も打って甲子園決勝も決めてしまうと考えれば、どれだけ桑田が当時の高校野球ファンに強烈な記憶を残してくれたかをご理解いただけるはずだ。4本の中で、やはりこの本塁打が一番衝撃的であった。

 桑田が素晴らしいのは、3年夏までパフォーマンスを落とすことなく、甲子園通算20勝を挙げたこと。スーパー1年生と呼ばれた選手が伸び悩んで、パフォーマンスを落とすことが圧倒的に多い。1年生で煌めく才能を見せた選手に対して、桑田や清原のような道のりを期待したくなるが、甘いものではないことを多くの方が実感しているからこそKKコンビは記憶に残る存在なのだろう。


注目記事
・夏よりも熱い!全国の野球部に迫った人気企画 「僕らの熱い夏2015」
・第97回全国高等学校野球選手権大会特設ページ

このペ-ジのトップへ

[page_break:藤井、平田、廣井、北條、森のパフォーマンスを振り返る]

藤井、平田、廣井、北條、森のパフォーマンスを振り返る

 藤井進選手は、1985年、3回戦の東農大二戦で2本塁打を放つと、準々決勝で鹿児島商工(現・樟南)戦で本塁打を放ち、さらに準決勝の東海大甲府戦でも本塁打を打ち、清原を上回る4本塁打で、注目を浴びていた。しかし清原が決勝戦で2本塁打を放ち、藤井は不発に終わった。だが、清原とともに注目を浴びたスラッガーであったことは間違いない。

 また2005年に登場した平田良介選手は、2回戦の藤代戦でレフトスタンドへ滞空時間が長い本塁打を放つと、3回戦の東北戦はさらに凄かった。2回裏、打席に立った平田は変化球を豪快に引っ張り、レフトスタンドへ飛び込む豪快な本塁打を放つと、4回裏にも変化球を引っ張り、またもレフトスタンドへ打ち込み2本目。この一打にスタンドでざわつく。そして迎えた第4打席。7回裏、一死から打席に立った平田は真ん中に入ったストレートを逃さず、バックスクリーン右に打ち込む本塁打を放ち、一試合最多タイとなる3本塁打を記録した平田は、甲子園ファンの釘づけにした瞬間であった。

 廣井亮介選手は強打の智辯和歌山の中心選手として大活躍。2006年夏、いきなり県岐阜商戦で本塁打を放つと、3回戦の八重山商工戦では2本塁打を放ち、ベスト8入りを果たすと、準々決勝では帝京と壮絶な打撃戦の末、13対12で勝利した試合でも本塁打を放ち、一大会4本塁打の活躍を見せ、ベスト4入りに貢献したのだ。

左:森友哉(大阪桐蔭)、右:北條史也選手(光星学院)

 6年後の2012年。北條史也選手が大爆発を見せる。2回戦遊学館戦では9回表に、中越えの2ラン。この一打で勢いに乗った北條は3回戦神村学園戦で初回に2ランを放ち、さらに準決勝東海大甲府戦でも、2ホーマーを放ち、一大会歴代2位の4本塁打となり、歴史に名を刻んだ。

 そして森友哉選手だ。夏の甲子園初本塁打は、2年夏の濟々黌戦(試合レポート)のこと。大竹耕太郎のインコースのストレートを振り抜き、ライトスタンドへ持っていった一打は技ありの一打であった。準々決勝天理戦では中越え本塁打を放つ。さらに3年夏の日本文理戦(試合レポート)。2回裏に打席に立った森は外角ストレートをレフトスタンドへ飛び込む本塁打を放つと、そして4回裏、森は内角ストレートを今度はライトスタンドへ打ち込み、これで夏4本目となった。

 森の打席を見ていて思ったのは、打撃技術の高さはもちろんだが、狙い球を逃さない好球必打の姿勢が素晴らしい。本塁打を打った打席を振り返ると、これは打つだろうという雰囲気を感じるのだ。その集中力の高さが、現在の活躍にもつながっているのかもしれない。

  高い注目度が集まる夏。そこでスラッガーとして目立てば長く甲子園に語り継がれていく。平田、北條、森が見せた一打は全て圧巻だった。
この夏はどんな選手が甲子園に名を刻む本塁打を見せてくれるのか。注目していきたい。

関連記事をチェック!
【インタビュー】埼玉西武ライオンズ 森友哉選手(2014年03月18日公開)
【インタビュー】野球解説者 桑田真澄 さん(2013年04月11日公開)
【インタビュー】中日ドラゴンズ 平田 良介選手(2009年07月10日公開)


注目記事
・夏よりも熱い!全国の野球部に迫った人気企画 「僕らの熱い夏2015」
・第97回全国高等学校野球選手権大会特設ページ

このペ-ジのトップへ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.03.27

報徳学園が投打で常総学院に圧倒し、出場3大会連続の8強入り

2024.03.27

【福岡】飯塚、鞍手、北筑などがベスト16入り<春季大会の結果>

2024.03.27

青森山田がミラクルサヨナラ劇で初8強、広陵・髙尾が力尽きる

2024.03.27

【神奈川】慶應義塾、横浜、星槎国際湘南、東海大相模などが勝利<春季県大会地区予選の結果>

2024.03.27

中央学院が2戦連続2ケタ安打でセンバツ初8強、宇治山田商の反撃届かず

2024.03.23

【春季東京大会】予選突破48校が出そろう! 都大会初戦で國學院久我山と共栄学園など好カード

2024.03.24

【神奈川】桐光学園、慶應義塾、横浜、東海大相模らが初戦白星<春季県大会地区予選の結果>

2024.03.23

【東京】日本学園、堀越などが都大会に進出<春季都大会1次予選>

2024.03.27

報徳学園が投打で常総学院に圧倒し、出場3大会連続の8強入り

2024.03.22

報徳学園が延長10回タイブレークで逆転サヨナラ勝ち、愛工大名電・伊東の粘投も報われず

2024.03.08

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.03.17

【東京】帝京はコールド発進 東亜学園も44得点の快勝<春季都大会1次予選>

2024.03.11

立教大が卒業生の進路を発表!智弁和歌山出身のエースは三菱重工Eastへ、明石商出身のスラッガーは証券マンに!

2024.03.23

【春季東京大会】予選突破48校が出そろう! 都大会初戦で國學院久我山と共栄学園など好カード

2024.03.01

今年も強力な新人が続々入社!【社会人野球部新人一覧】