石川 歩投手(滑川-千葉ロッテマリーンズ)「WBCのマウンドに立っていたのは今でも信じられない」【後編】
先月まで開催されていた第4回WBC。日本はし烈な一次ラウンド、二次ラウンドを全勝で準決勝進出。惜しくもアメリカに敗れたが、その戦いぶりは大きな感動を呼んだ。その日本代表の先発投手として、引っ張った石川歩。今度は千葉ロッテの主力投手として、リーグ優勝を目指す。石川歩投手の原点を知るべく、高校時代のエピソードを紹介!前編では高校時代のエピソードについて迫ったが、後編では、大学進学以降の話に迫った。
大学で全国区の投手に
石川 歩(千葉ロッテマリーンズ)
「大学1年の5月に石川から電話がかかってきて、『ベンチ入りしました』ってすごい嬉しそうだったんです。25人の中に選ばれたって。今ジャパンに入ってるやつが初めてベンチ入りしたって電話かけてくれてきて、良かったなぁって言ってすごい喜びました。僕もすごい嬉しかったしあいつもすごい嬉しかったみたいです。自分もやれるってやっとそこで思ったみたいですね。大学ではいいピッチャーになってました。
僕が観に行った試合は負けるんですけど(笑)。でもその頃には素晴らしいボールを投げるようになっていたし、大学2年の頃に全日本選手権に出てその時にベスト8まで行ったんです。運のいいやつで、4年にも3年にもいいピッチャーがいたんですけど打たれて、じゃあ経験させるかってことで石川が3イニングぐらい投げたら、その時に146キロぐらい出すんです、神宮で。それを当時全日本の監督をしていた近畿大学の榎本 保監督がバックネット裏で見ていて、その辺から確変に入ったんじゃないかな。
全日本の合宿に呼ばれて、斎藤佑樹とか澤村 拓一といっしょになって。緊張して全然ダメだったみたいだけど大渕さんからも『石川君、いよいよ全国デビューだね』って言われました。3年になるとうんと良くなっていきましたね。あいつけっこう良いやつで、帰ってきたら必ず練習に顔を出してくれる。それでバッティングピッチャーやってくれたり。大学生のボールですから田舎の高校生が見たことないようなボールで、その頃にはちゃんとシンカーが持ち球になってました。大学1年の夏から秋にかけて調子を落としたこともあったみたいなんですけど、堀田コーチが付きっきりで面倒見ててくれたみたいです。それが良かったんじゃないですかね。だからあいつ堀田さんは命の恩人ぐらいに思ってると思いますよ。
自分の練習には集中出来るタイプの子だったんでね。大学が合ってたと思いますよ。あいつおもしろいこと言ってたのが『大学行ってから足が速くなりました』って。大学2年の時には野手含めてもチームで1番か2番だったらしいですよ。プロのスカウトにその話をしたら『それはいいんだよ。足が速くなると絶対ピッチングも良くなる。体の使い方がよくなってることだから』って。自分の納得した練習はしっかり出来るから大学とかプロで良くなったんだと思います。
今でもストレートへのはこだわりはすごく持ってるんですよね。シンカーばっかり言われるんですけど、高校生の頃からそんなこと言ってたかもしれない。大学の時には間違いなく言ってました。『真っすぐです。真っすぐが良くならないと』って。軽いと言われてましたが今はキレのある良いボールです。確かに緩いフォームですけど、中田翔(関連記事)が『石川、速い』って言うのわかりますよね。多分速いんですよね、プロのバッターにしてみたらね。高校時代に大渕さんが見た時にも『きれいな投げ方してますね』って言ってくれてました。
富山10番手が日の丸を背負う。「楽しんでほしい」
土井 聡先生(富山中部)
学校生活では学級委員とかそういうものは避けるタイプでしたね、今といっしょです。だからWBCでも松田 宣浩(関連記事)とか中田翔とかといっしょにいれないでしょうね。でも良い意味で、自分の時間、自分の間を持ってるんだと思います。だから付き合いがあれば付き合うでしょうけど、熱男!とかガッツポーズとかはやらないと思いますよ。
運動会のリーダーとかも野球部の子はすることが多いんですけど、あいつはやらなかったと思うし、教室に入ってもどこにいるのかわからないようなやつでした。グラウンドに出れば背も高いんでそれなりですけど、教室では全く目立たない子でした。入学時56kgだった体重は卒業の時でも70kg無かったですよ。
多分64、65kgじゃないですか、身長は182cmぐらいありましたけど。だから最後までひょろひょろでした。合宿でもあんまりご飯をガツガツ食べてる雰囲気は無かったです。だから大学でベンチに入ったっていうのは僕にとっても快挙ですよね。愛知県の1部のチームに入って1年生から出番もらってるってとんでもない話だったし、ましてや2年生になって大学選手権で投げさせてもらえるなんて夢のような話。その時でも僕はプロとかはまだ思ってなかったです。それが今、後ろで中田とか山田とか坂本が守ってるんですよ。
ウソみたいな話ですよね。菊池とハイタッチなんかしちゃって、お前、何やってんのって(笑)。不思議ですよね。こんな楽しい不思議は無いですね。ネットの記事であいつが「WBCなんて高校時代の自分が聞いたら腰抜かす」って言ってるの見たことありますけど、ホントだと思います。高校の時は富山県で10本の指ぐらいだったと思います。10番にも入れるかなぁぐらいだったと思います。だから対戦した県内の監督さんの中でも印象に無いと思いますよね。それが大学野球で活躍してるらしいぞって聞こえてきて、それだけで自慢でしたから。
WBCでは本人はきっと本人なりに緊張してると思うんですけどね、結果は大事ですけど、楽しんでほしいなぁって思います。僕らはもうホント十分楽しませてもらってる、あいつに申し訳ないぐらいに。僕らなんかが期待と言うとおこがましいけど、楽しみにしてますってもうファンだよね。だってカッコいいもん(笑)。ジャパンのユニフォーム着て、あの舞台で投げてるんだもんね。だから難しいと思いますけど、あいつも楽しめるといいなぁ。よくやったぞ、って言ってやりたいし。それといつか富山で投げて欲しいですね。元気なうちにね(笑)」
(取材=小中 翔太)
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