Column

武田 翔太投手(宮崎日大-福岡ソフトバンクホークス)「試練から逃げず、努力したからこそ今の姿がある」【vol.3】

2017.03.27

「意識高く、練習を大切にする投手 右肩上がりの成長のかげに」【vol.1】
「成長のターニングポイントとなった大分遠征」【vol.2】

第3回はドラフト会議後のエピソードた、プロ入り後の活躍について河邊さんが思うことについて語っていただいた。

入団会見が一番華やかな会見になったらいかん

武田 翔太投手(宮崎日大-福岡ソフトバンクホークス)「試練から逃げず、努力したからこそ今の姿がある」【vol.3】 | 高校野球ドットコム

武田 翔太(福岡ソフトバンクホークス)

 屈辱の準々決勝敗退で高校野球を終えてから、1カ月あまりが過ぎた9月、武田は卒業後の進路を「プロ」と明確にする。10月のドラフト会議でソフトバンクが単独1位指名してプロ入りが実現した。

「甲子園には行けなかったけれども、3年間で同年代の中では間違いなくトップクラスといえるような投手に成長していました。進路に関してはそれなりに注目される選手だから、軽率な発言はするなと指導もしていました。いずれはプロに行くにしても、その前に大学に行くか、社会人に行くか、それとも高卒でそのまま行くか、いろんな選択肢があります。両親や担任ともしっかり相談して最後は自分で決めろと言いました。私は高卒の投手でドラフトにかかるなら、上位指名でなければその後が厳しいと考えていました。高卒で下位の投手は見切りをつけられるのも早い。いろいろ情報を集めて、1、2位で確実に指名されるであろうことは分かっていました。最終的にプロで行くと決めたのが9月の頃でした。

 ドラフトの日は、学校にテレビの中継が入って、1位指名が入るとすぐに握手を交わしました。本人にとっても指導者としても、良かったと思える出来事でしたが、プロは活躍しなければ意味がない。その場では言いませんでしたが、『入団会見が一番華やかな会見になったらいかん』とは常々言い続けていたことでした。

 入団して以降、彼とはたまに電話を掛けたり、キャンプを見に行くぐらいで、一ファンと同じ心境で接しています。いろんな紆余曲折はあるでしょうが、プロでも順調に成長していると思います。『九州のダルビッシュ』とか、同じソフトバンクに武田 一浩投手がいたことから『武田二世』とか、ビッグマウスだとか言われたりもしますが、本人はいたって謙虚で、いかにすれば勝てるか、いかにすればプロで通用する投手になるかだけを考えている。高校の頃、カーブ投手のイメージはなかったですが、あの投球法を伝授したのは佐藤 義則コーチや工藤 公康監督関連記事でしょう。彼はそういう良い人に恵まれている。今回のWBCも大谷の離脱があったからこそ最後に代表入りしましたが、そんな話題もあって注目される。そういう運も持っています」

[page_break:夏の準々決勝敗退は神様が与えた試練だった]

夏の準々決勝敗退は神様が与えた試練だった

「直球は今155キロを最速で投げ、常時140後半のスピードはありますが『たとえ160キロ投げられたとしても、僕の給料が上がるわけではない』と常々言うようになりました。160キロを投げて良い投球をしても、抑えられなければ意味がない。逆に調子が悪くていくら打たれても、抑えてしまえば評価される。結果が全ての世界の中でどうすればいいかを常に考えながら野球をやっている。メディアからビッグマウスと言われたりしますが、どうせならマウンドの上で吠えた方がチームを鼓舞することにもなると、最近ではようやくガッツポーズや雄叫びを上げるようになりました。

 最初の頃はシーズン途中からチームに合流するぐらいでいいと思っていたのが、最近では『開幕投手を狙う』と言うようになりました。謙虚で控えめでありつつもやるときはやる。16年の正月に宮崎のタウン誌の企画で対談しましたが、大人になったなぁと実感しました。

 彼がプロになって中学生の教室を開いたことがありますが『練習を大切にすること』を強調していました。何よりも練習を大切にしていたからこそ言える言葉なのだと思います。加えて彼には1つ教えたことを、2にも3にも膨らませるだけの考える力がありました。高校の頃、マウンドでボールがきていなかったので、プレートの踏み位置を変えてみたらどうかとアドバイスしたことがあります。右投手はプレートの一塁側を踏むのが多いですが、踏む位置を少し変えるだけでも身体のキレが変わってくる。そうやって調子を戻す方法を教えました。

 プロ野球中継を見ながら私は投手の足下を見ることが多いのですが、プロの投手でもその辺は案外意識していないことが多い。武田の場合はそれを意識か、無意識かは分かりませんが、今でもきっちりやっている。そうやって彼は頭の中に『武田辞書』があってそれを自在に引き出すことができる。今やプロで2桁勝てる投手ですからその辞書の厚さは私の想像も及ばないほど分厚いものになっていることでしょう。

 高校時代、甲子園などの大舞台を経験させてあげることはできませんでしたが、練習の経験だけは誰にも負けないものを積ませた。夏は不運な負け方をしたけれども、勝って甲子園に行っていたら今の武田があったかといわれると何とも言えないです。ただ、あの敗戦は武田と、指導者である私に対する野球の神様の試練だったのでしょう。野球の神様は必ずいるし、与えてくれる試練をどう受け止めるかで人生は変わってくる。彼はあの試練を逃げずに受け止めて更に精進努力したからこそ今の姿があると思っています。

 高校の指導者としてはこのまま順調に育ってほしいと思いますが、一つ望みがあるとすれば東京五輪では日の丸を背負ってほしいものです。ちょうど26、7歳と脂がのって多少の無理もきく。そこで結果を残してメジャーに行く。そんな将来図を彼自身も描いていると思います。そのためにも今年、来年の出来が大事でしょうね」

(取材=政 純一郎

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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