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西川 遥輝選手(智辯和歌山-北海道日本ハムファイターズ)「あいつはまだまだこんなものではない」

2016.03.17

 強力打線で全国をリードする智辯和歌山。これまで甲子園に集まる高校野球ファンを熱狂させる強力打者が数多く登場してきたが、その中で名将・高嶋 仁監督が「センス、そして選手として将来性は一番」と評するのが、北海道日本ハムファイターズに所属する西川 遥輝である。高卒4年目の2014年に盗塁王を獲得するなど、一軍で活躍を続ける西川選手の高校時代について、また現在の西川選手について思うことを話していただいた。

西川選手に盗塁成功の確率を上げる秘訣を伺いました!
■2015年インタビュー「根拠あるプレーを魅せるための準備力」

1年春からデビューも故障で苦しんだ3年間

西川 遥輝選手(北海道日本ハムファイターズ)

「西川は中学の時から見ていて、当時から足、センスは抜群の選手だったので、1年生の春から使った選手でした。今まで春の大会が終わってから1年生を起用することはあっても、1年春からレギュラー格として使ったことはあまりありません。デビューも衝撃的で、春も何本もホームランを打っていたんです。これはプロに行けるかなと思いましたよ。

 しかし高校時代の西川はケガが多かった。1年夏の前に手首を骨折して、手術です。そこで病院にいる西川をお見舞いにいったんです。そして西川に状態を聞いたあと、こう言いました。
『和歌山大会は間に合わんけど、甲子園には間に合うなぁ。甲子園に合わせておけよ』と。西川も驚きだったと思います。何、言ってんだこのオッサンは(笑)と」
 

 まだ甲子園出場も決まっていない段階だったが、順当に勝ち進み、智辯和歌山甲子園出場を決めた。そして西川が登場したのは、2回戦の木更津総合戦から。しっかりと甲子園に合わせて復帰したのだ。

「しっかりと本番に合わせてきましたね。当時から大会に合わせて調子を上げる選手だったんです」

 西川はデビュー戦となった木更津総合戦で初安打初盗塁を記録。そして準々決勝の常葉菊川戦で三塁打2本を含む5打数3安打2打点の活躍。走攻守に躍動する姿に多くの方々がワクワクしたはずだ。しかし西川は高校時代、故障に苦しむことになる。

「本当にケガが多かった選手でした。高校時代はリハビリや治療など別のメニューで過ごすことが多かった。それでも甲子園に出場すればしっかりと打つ。そういうセンスは凄いと感じていましたし、走塁、守備もしっかりとこなす選手で、当時のチーム状況を考えると欠かせない存在でした。ケガした中でも何ができるかを考えている選手でしたし、野球について貪欲に取り組める選手だったと思います」

 翌年の2009年夏も甲子園出場するが、故障に対する不安が消えなかった。西川がけがもなく、プレーできるようになったのは3年生の時だった。

「でも3年春夏の甲子園ともに、ケガをしているときより打っていない(笑)。春は興南に負けてしまったのですが、当時の島袋 洋奨から無安打に終わって、中心選手こそああいう投手を打たないと思った試合でしたね。夏の成田戦(試合レポート)では3打席目まで無安打だったのですが、第4打席でこの日、一番の当たりを打ったんです。左中間へ抜けたと思ったのですが、相手のポジショニングが絶妙で、見事にセンターに打球が捕られてしまって、相手が強かったというのもありますが、初戦敗退です。

 高校時代を振り返ると、4回甲子園出場しましたが、彼の才能をすべて引き出すことなく終わってしまった感じです。そして甲子園が終わって、ドラフトが近づいてきました。彼は下級生の時からプロ志望で、ケガはありましたが、プロ入りする目標に向かって努力ができていて、野球センスも歴代の選手と比べれば優れたものがありました。プロへ行くだろうと感じていました」

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[page_break:今年はWBC代表に選ばれるような成績を残してほしい]

今年はWBC代表に選ばれるような成績を残してほしい

西川 遥輝選手(北海道日本ハムファイターズ)

 そして迎えた2010年ドラフト。西川は北海道日本ハムファイターズから2位指名を受ける。高嶋監督は2位指名されたことにかなり驚いたという。

「予想以上の高順位ですよ!僕は行けたとしても4位~5位なんじゃないかと思っていましたから。ドラフト後になぜ2位に指名されたかをスカウトに聞いたら、本塁から一塁までの到達タイムが日本一だったらしいんです。そしてどんな状況でもしっかりと走っている。足と取り組む姿勢を評価してもらったんですね。プロのスカウトの方は練習試合からいらっしゃったのですが、普段からそういうところまで見ているんだなと驚きましたし、あいつなりに懸命に走っていたのでしょう。それをプロのスカウトは見逃さなかったですし、もし今の選手たちに伝えるのならば、そういうところを見習ってほしいと思っています」

 そして西川は高卒2年目となる2012年から一軍出場。プロ初本塁打を記録し、さらに71試合に出場するなどプチブレイクを果たすと、高卒4年目の2014年に自己最多の143試合に出場し、43盗塁を記録し、盗塁王を獲得。初のタイトルを手にしたのであった。5年目で通算100盗塁を達成。順調にステップアップしているといえるだろう。

 しかしここまでの活躍について、まだ物足りないという。
「いやまだこんなものではないでしょう。彼が早く出てきたのは走塁のレベルも高く、外野手、内野手もできる使い勝手の良さがあるから。成績を見ると、彼はホームランバッターではないので、そこまで本塁打は求めていないですが、打率はもっと高くないと。打率2割6分~7分、年俸6000万は彼の能力からすれば物足りません。だから西川には1億もらえる活躍をしろ!とはっぱをかけているんです」

 これまでのプロに進んだ選手の中でも一番の選手と評価しているだけに、西川に対する評価は厳しい。西川にはどんな選手になってもらいたいのか。

「そりゃもう1億以上もらえるような活躍をすることです。やっぱり侍ジャパンに選出されるような選手になってもらいたいですね。2017年はWBCがありますから、それに選ばれるためには本当に今年は大事な一年。1億もらえるような選手になったとき、人間的にも、技術的にも、メンタル的にも良い意味で、大きく変わってくると思いますよ。西川は山田 哲人選手関連コラムと同い年ですが、彼も山田選手のような爆発力のある成長が十分に期待出来る選手だと思っています。

やる、やらないかは本人次第ですね」 

 高嶋監督が期待する「爆発力ある成長」。高校時代ではケガもあり、思うようなパフォーマンスができなかった。
それでも高卒2年目から台頭した西川選手だが、昨季は2014年の成績と比べると打率は上がったものの、本塁打、打点、盗塁とすべて数字を落とした。今年1年、プロ野球ファンを驚かせるインパクトある活躍を見せてくれるだろうか。

(取材・構成=河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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