Column

2013年度18Uの現在地

2014.08.31

 明日、9月1日から第10回 BFA 18Uアジア選手権が始まる。今年の高校野球界を代表する18名が世界と戦う。
この世代の国際大会は少ないだけに代表選手にとっては貴重な経験になるだろう。

 昨年の第26回 IBAF ワールドカップ(以下、18UW杯)は、日本は松井 裕樹森 友哉などそうそうたるメンバーで挑み、準優勝に輝いた。代表20名のうちプロ入りしたのは実に10名だが、プロとアマの壁はやはり大きく、苦戦している選手もいる。一方、社会人や大学に進んだ選手はすでに戦力として活躍している者もいる。
次の侍ジャパントップチームを担う彼らの現在地を追った。

投打の要の現在地

2013年18UW杯の松井 裕樹(桐光学園)

 この代表20人のうちプロ入りした選手は10人いるが、8月30日現在、一軍でプレーしているのは日本チームのエースとして活躍した松井 裕樹桐光学園―楽天)と、好守でチームを引っ張った森友哉大阪桐蔭―西武 独占インタビュー:2014年03月18日)の二人。共に昨年大会ではチームの中心選手として戦った。

 4月に4試合先発した松井は、すべて6回以内にKOされた。課題は高校時代にも指摘されたコントロールで、与四球は19回3分の1を投げて23個(他に死球が1個)。
4月23日に二軍降格した松井は、6月7日に一軍復帰。救援で経験を積み、先発に復帰すると7月、8月はイニング数の半分の与四球とコントロール難を大幅に改善。

その一方で、奪三振数はイニング(76イニング)以上の87個奪うなど徐々にプロの水に慣れてきている。(成績:試合21 2勝7敗4.03)

 また「今年はファームで育成」という球団方針より開幕は2軍で迎えた森 友哉。当初は2、3番を打つことが多く、ポジションも指名代打と捕手の出場が半々で、首脳陣の徐々にプロの水に慣らそうという配慮が見えた。

 高校時代から森の専売特許とも言えるフルスイングは健在で、フルスイングしようとするあまり上体を深く沈め、反動を使って振ろうとする悪癖が顔を覗かせているが、成長に向けての一里塚と言っていいだろう。

 こうした配慮もあり、徐々にプロのレベルにアジャストしていった森は、67試合で打率341本塁打5と好成績を残すと、当初の予定より大幅に早く7月27日に一軍に昇格。
初打席初安打を放つと、これで波に乗った。高卒新人選手としては46年ぶりの3試合連続本塁打を放つなどその後の活躍はご存知のとおり。西谷監督(大阪桐蔭)が「指導してきた中で打撃に関しては過去最高」と話すほど高い打撃センスを持っており、一軍でもその存在感を増してきている。(成績:試合18 打率417 本塁打3)

第10回 BFA 18Uアジア選手権

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[page_break:ファームで才能の片鱗を見せる奥村・内田・渡邊・園部]

ファームで才能の片鱗を見せる奥村・内田・渡邊・園部

2013年18UW杯の渡邉 諒(東海大甲府)

 一軍デビューした森の他にファームの規定打席に到達しているのが奥村 展征(内野手・日大山形―巨人)、内田 靖人(内野手・常総学院―楽天 独占インタビュー:2013年10月21日)の2人である。

 内田は昨年、楽天のフロントを取材した際、よく名前が出た選手だ。
甲子園では捕手と三塁手でプレーし、捕手としては座ったままの二塁送球で話題を呼んだ選手だが、現在の起用法を見る限り、三塁手としてやっていくようだ。
チームとしても今シーズンは結果に関わらず使い続け、経験を積ませる方針。チームで2番目となる打席数(342)は、和製大砲として成長してもらいたい球団の高い期待をうかがわせる。(試合86 打率223 本塁打6)

 奥村もプロに適応している。(試合74 打率227 本塁打2)
違和感があったヒザを屈伸した状態で足を上げる始動は現在、イチローがかつて取り組んでいた振り子打法に近い動きになり、固かった印象がきれいになくなった。
左右広角に打てる柔軟性と、堅実な二塁守備にも見どころがあり、巨人の中では比較的弱いとされるポジション奪取に期待がかかる。

 また渡邉 諒(内野手・東海大甲府―日本ハム)は怪我でチームを一時離脱し規定打席には達していないものの、才能の片鱗をしっかりと見せている。
とくにシーズン開始早々の3~4月にかけてマルチ安打を量産、本塁打も3本放つなど適応能力の高さに驚かされた。

 3/19 4打数2安打
 3/21 5打数2安打
 3/25 4打数2安打2打点
 3/26 4打数2安打2打点
 3/27 5打数2安打
 4/ 1 5打数3安打2打点

 怪我からの戦歴復帰した後も安定した成績を残しており、近い将来、中田翔(独占インタビュー:2014年07月18日)・大谷翔平とクリーンアップを組む可能性を秘めた期待の大砲候補だ。(試合43 打率268 本塁打4)

 この渡邉が上位を打ち続けているのに対して、下位からスタートしたのが日本代表のクリーンアップを任されていた園部 聡(内野手・聖光学院―オリックス 独占インタビュー:2013年10月26日)だ。
開幕当初は安打が出ない試合が続いたが、4月26日の広島戦で本塁打を含む4打数2安打3打点、5月6日の阪神戦で本塁打を含む4打数3安打2打点。
8月30日現在打率は1割台ながらも本塁打は5本と長距離打者として素質は発揮しつつある。(試合50 打率191 本塁打5)

第10回 BFA 18Uアジア選手権

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社会人、大学でも活躍する山岡に竹村

2013年18UW杯の竹村 春樹 (浦和学院)

 マチュア組では山岡 泰輔(投手・瀬戸内-東京ガス)、竹村 春樹(内野手・浦和学院―明大)が早くもチームの戦力になっている。
山岡は4月13日に行われたJABA長野県知事旗の七十七銀行戦で社会人デビューを飾った。先発して6回を投げ、失点0は及第点である。
そして山岡は今夏の都市対抗にリリーフで登板し2勝をあげるなど、ルーキーイヤーにもかかわらずチームの貴重な戦力として好投をみせた。

 竹村は東京六大学リーグの春季リーグ戦で6試合に出場し、打率・286とまずまずの結果を残している。私がプレーを見たのは4月13日の東大戦で、9回から守備固めでショートに入り、守備機会はなかった。
ただ、その前日の開幕ゲームとなった東大戦では1番・ショートとしてスタメン出場し、早くも1安打を記録している。上々のスタートと言っていい。

 安楽 智大(投手・済美 連載コラム「安樂智大」)、高橋 光成(投手・前橋育英 独占インタビュー:2014年08月29日2014年08月30日)の高校3年組は、共に予選敗退で甲子園の土を踏むことはなかった。

 ただ安楽も負けはしたものの元気な姿をみせ、高橋は、昨年に続き代表選手に選ばれ、今大会は日本代表の大黒柱として大会を迎える。今秋に注目される二人であることは間違いない。

 総じて昨年の18UW杯出場組は順調に新たな第一歩を踏み出したと言っていいと思う。

(文=小関順二

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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