Column

茨城の戦力分布 ~新チームを読み解く~

2014.09.05

茨城における新人戦

大関友久(土浦湖北)

 
茨城では、8月15日を過ぎたころから、秋季地区大会の前哨戦となる新人戦のような大会が開催される。なぜ新人戦「のような」としたかというと、茨城には「新人戦」と銘打った大会は実際には存在しない。その代わりに開催されるのが、「ジュニア大会」や「選抜大会」といった準公式試合だ。

 茨城は県内が4地区に分けられており、県北地区と水戸地区では「ジュニア大会」という名を、県南地区と県西地区では「選抜大会」という名を冠して、新人戦が開催される。

 ちなみに、選抜とは表記しているが、実際には全チームが出場する。また茨城の準公式試合は、入場無料となっている。

 加えて、他県の場合、各地区の新人戦優勝チームで交流し、頂点を決めることもしばしば見られるが、茨城の場合、そのような交流戦は行われたことがない。
というのも、茨城では新人戦を、各校の現状のチーム力を把握し、秋季地区大会のシードを決める参考とする大会と位置付けているからだ。したがって、決勝まで行われる県南地区を除いて、他の3地区では地区の頂点を決めることは敢えてしない。

 その代わり、全地区で敗者復活戦が充実している。もし初戦で敗れたとしても、敗者復活戦に回るため、各校は新人戦段階で同地区のチームと、少なくとも2試合経験を積むことができる。

 この新人戦で上位に進出したチームには、秋季地区大会のシード権が与えられる。また、敗者復活戦に回ったチームであっても、そこで勝ち上がったチームは別々なブロックに振り分けられる仕組みとなっている。
このように、2度ふるいに掛けるシステムでシードを決定しているため、秋の地区予選1回戦から有力チーム同士がつぶし合うということは、起きにくくなっている。

秋季大会特設ページ~選抜への道~

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県北・水戸地区の結果

大和田 蓮 (水城)


■県北地区ジュニア大会

県北地区は参加20チームで、4ブロックに分けられるため、優勝が4チームとなる。主な結果は次のとおり。

優勝 多賀明秀日立勝田工日立一
8強 小瀬高萩清松佐竹太田一

 金沢 成奉監督の就任から3年目となり、勝負の年を迎える明秀日立と、今夏は下級生が主体のチーム編成だった日立一は、順当な勝ち上がりだろう。

 今年3月まで水戸商の監督を務めた野澤 哲郎氏は、新チームから日立商の監督に就任した。日立商は初戦で日立一に3対7と惜しくも敗れたが、秋の結果次第では県北地区の中学生のリクルートに大きな影響を及ぼすことになるだろう。それだけに、水戸商時代に比べて明らかに劣る戦力を、今後どのようなチームに仕上げてくるか、野澤監督の手腕に注視したい。

■水戸地区ジュニア大会
水戸地区では参加25チームが2ブロックに分けられて決勝が行われるため、優勝が2チームとなる。

優勝 水城水戸葵陵
4強 鹿島学園緑岡
8強 水戸商波崎柳川鹿島玉造工

 今夏、下級生が主力だった水城水戸葵陵は仕上がりが早く、順当な優勝といえよう。水城は昨秋から主戦登板している大和田 蓮(2年、河原子中、オール茨城)に加えて、小林 奨吾(2年、野田ポニー)、黒木 翔立(1年、鉾田南中、県東選抜)らが台頭しており、投手陣は盤石であるとの呼び声が高い。

 水戸地区では、実力校が集まったブロックとそうではないブロックがあったことから、有力チームである水戸工水戸啓明が2回戦で敗れ、地区予選Aシードを逃した。これが地区予選にいかなる影響を及ぼすか気になるところだ。もし地区予選で敗れたら、春のシードも得られず、夏のシード入りはかなり厳しくなる。

秋季大会特設ページ~選抜への道~

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県南・県西地区の結果

安高颯希(霞ヶ浦)

■県南地区選抜大会
今夏の茨城大会では、8強のうち7チーム(藤代霞ヶ浦常総学院取手松陽土浦湖北牛久石岡一)が県南地区であったことが示すとおり、県南地区は強豪チームがひしめく激戦区だ。このうち、甲子園に出場した藤代は予選を免除されるため、23チームで決勝まで行われた。

優勝 霞ヶ浦
準優勝 常総学院
4強 取手松陽石岡一
8強 土浦日大つくば国際大高東洋大牛久江戸川学園取手

 決勝は霞ヶ浦常総学院の対戦となったため、選手起用の手の内は見せないかと思われた。しかし、予想に反し、両チームともエース候補を起用するというガチンコ対決となった。

 優勝した霞ヶ浦は、4番・根本 薫(1年、取手シニア)をはじめとして力のある左打者が並び、決勝では常総学院鈴木 昭汰(1年、土浦霞ヶ浦ボーイズ)から着々と点を重ね攻略した。
また、霞ヶ浦先発・綾部 翔(2年、取手シニア)は、常総学院を8回1失点に封じた。この結果を受けて、今後2校がいかなる対策を講じて直接対決に臨むかが楽しみだ。

 今夏初の4強入りを果たした取手松陽は、準決勝・霞ヶ浦戦でエース・内村 悠斗の登板を回避した。それまでの2試合の疲れを考えての回避かもしれないが、今後頂点を取りに行くためには霞ヶ浦の壁を避けては通れないため、敢えて手の内を見せなかったとも考えられる。

 県南地区選抜大会では、今大会からタイブレーク制が導入された。江戸川学園取手は、1回戦で土浦二にタイブレークで4対3、2回戦ではシード・土浦湖北にまたもタイブレークで5対4と勝利し、8強入りを果たした。

 一方、土浦湖北はエース・大関 友久(2年、常総ドリームボーイズ)を擁しながらも2年連続でAシード入りを逃し、県大会への厳しい戦いを強いられることとなった。抽選次第では地区代表決定戦で土浦湖北×常総学院霞ヶ浦といった、ファン垂涎のカードが楽しめそうだ。

■県西地区選抜大会
県西地区は参加24チームで、4ブロックに分けられるため、優勝が4チームとなる。

優勝 古河三つくば秀英守谷総和工
8強 鬼怒商下妻二下館工

 県西地区も、今夏からの主力メンバーを多く残すチームが勝ち上がってきた印象を受ける。今夏常総学院をあと1アウトのところまで追い詰めた守谷は、下妻二に対して決勝で1対0と勝利し波に乗る。

 また、つくば秀英は今夏活躍した投の中心・野澤 佑斗(2年、古河一中)や、打の中心・金井 洸樹(2年、結城南中)が最上学年となり、危なげなく勝ち上がった。
今夏、最速142キロをマークした剛腕・大木 魁人(2年、明野中)を擁する明野は、2回戦でに敗れ、敗者復活戦でも下館一に敗れた。

 秋季茨城県大会地区予選は、9月8日に抽選が行われ、9月13日から16日の間に実施される。

(文:伊達 康)

秋季大会特設ページ~選抜への道~

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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