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第96回全国高等学校野球選手権香川大会展望

2014.07.05

 40校が参加、四国4県の先陣を切って7月11日(金)9時から開会式、その後、香川県高松市にある[stadium]レクザムスタジアム[/stadium]で全39試合を開催し、予定通り日程が消化されれば7月26日(土)13時プレーボール予定の決勝戦で夢舞台への権利書が手に入る「第96回全国高等学校野球選手権香川大会」。英明香川西丸亀と過去3年はいずれもノーシード勢が甲子園出場を決めるなど、「混戦」が同大会の日常風景となっている。

 さらに6月27日(金)に行なわれた組み合わせ抽選会の結果、今年は強豪同士が数多く初戦で激突することになった。はたして、いっそうの激戦が見込まれる夏の香川を制するのはどの学校か? ブロックごとに展望を加えつつ、これまで取り上げきれなかった選手たちも紹介していきたい。

ベクトルをあわせて春躍進の三本松がリード

松本拓己(三本松) 

 大会途中で転勤が決まった「桑嶋 裕二前監督(現:津田部長)を胴上げする」べく、一致団結して春季県大会では11年ぶり4回目の優勝。見事公約と夏の第1シードを獲得した三本松

 かつて高松商を2度甲子園に導いた73歳・岡田 紀明監督の下で迎えた四国大会でも鳴門渦潮善戦。最速138キロ右腕・松本 拓己(3年)、柔軟な股関節を活かし沈み込みながら低めに伸びるボールを投ずる森髙 達也(3年)の2枚看板と、主将・黒田 圭人(3年身)のリード・強打は四国内でもハイレベルにあることを証明した。

 ただし、初戦の相手は秋季県大会初制覇した坂出春の県大会土庄の初戦敗退に終わっているものの、冬場のトレーニングを経て下半身の粘りが格段によくなった2年生左腕・鍋島 巧のクロスファイヤーや、反応のよさで広角に打ち分ける4番・有木 平(3年)を中心とした強打線はやはり侮れない。

 このブロックには強烈なインステップから常時130キロ台のストレートを投げ込む右サイド・藤谷 雄貴(3年)を投打に躍動する高松南や、インターハイ初出場を果たしたサッカー部に続きたい名門・坂出商、そして春季県大会坂出を破り、春季県大会登板なしに終わった長身右腕・森 宏太(3年)に覚醒の予感が漂う土庄も控える。高松南坂出商は7月11日(金)開幕戦のカード(10時20分開始予定)だ。

 さらに、この反対側のブロックにはプロ注目の最速148キロ左腕・塹江敦哉(3年)控える高松北がいる。チームは秋・春と公式戦での1勝が遠いが、塹江は春以降・生光学園(徳島)との練習試合でノーヒットノーランを達成するなど、下半身主導のフォーム改造でボールの力は全国トップレベルに。ここにエースとしての心の安定感が備われば、昨年のベスト4到達の先も決して夢ではない。

 打線では4番も任される塹江。高校通算33本塁打を誇る3番主将・丸井 大和(3年)とのコンビで、まずは魂の全力疾走は健在の観音寺中央や4、5月の練習試合で5割5厘の高打率をマークした山田 佑成(3年)がリードオフマンを務める藤井学園藤井らに挑む。

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[page_break:龍谷大平安倒し、勢いに乗る大手前高松]

龍谷大平安倒し、勢いに乗る大手前高松

塹江敦哉(高松北)

 春季県大会準優勝・初の四国大会も経験した大手前高松。5月18日(日)にセンバツ覇者・龍谷大平安(京都)を迎えて行なわれた県高野連主催招待試合でも最速141キロ左腕・7236(3年)が8回145球・38打者に7安打され6四死球を与えながらも5つの三振を奪って3失点完投で粘り、公式戦に近い雰囲気で初マスクを被った篠原 賢太(3年)との新バッテリーにもメドが。これらの成果は夏のチームマネジメントを進めていく上でも大きな収穫となった。

 ただ、初戦の相手は藤井学園寒川。右は下村 良摩(3年)、左は打線でも主軸を張る高田 篤志(2年)と同格の力を持つ投手陣もさることながら、不気味なのは32歳・筒井 晋一郎監督の夏初采配。34歳と同年代の山下 裕監督にとっても、高松商・亜細亜大野球をベースにする指揮官の動きには要警戒だろう。

 ここにはゲームメイキング力に優れる上戸 宏仁(3年)、最速139キロのストレートと、鋭く落ちるシンカーが武器の右サイド・高橋 圭司(3年)の右腕2枚看板を持つ観音寺一春季県大会は主に右翼手を務めるも、最近の練習試合では最速140キロに迫るストレートをマークするなど著しい成長が見られる池田 剛也(3年)がエースに座る志度もいる。準決勝への道のりはどの学校にとっても険しいものとなりそうだ。

 なお、昨年覇者丸亀は、制球力優れる左腕・矢野 将直(3年)、堅守の中村 春樹(3年)など、ディフェンスを重視したスタイルに取り組む今春県大会ベスト8・香川飯山との「丸亀市内戦」が初戦となる。

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[page_break:経験豊富な投手陣が光る丸亀城西]

経験豊富な投手陣が光る丸亀城西

西川雄大(丸亀城西)

 四国屈指の名将・橋野 純監督の下、9年ぶりの甲子園出場を狙う丸亀城西がやや有利な状況にある。投手陣は3年生3本柱が軸となる。

 右腕の西川 雄大は、181センチ90キロという体格を活かした強打も魅力。軟投派左サイドの宇野 晃大は、春季大会では全試合に登板したタフネスぶりが目立つ。そして秘密兵器的存在になりそうなのが、夏はエースナンバーを背負う右腕・土田 侑希は、フォークなどの縦変化を得意とする。龍谷大平安との高野連招待強化試合では、宇野~土田~西川のリレーで相手を4点に封じ、サヨナラ勝ちへの道程を築いた。

 この3投手を支える打撃陣も力強い。先述の招待強化試合では「パンチ力がある」(橋野監督)7番・河本 晃二郎(3年)が8回裏に起死回生の同点2ラン。春季大会では昨秋から半数のポジションをコンバートした「適材適所策」が打線の流れにも好影響を与えている。

 この強大な敵に立ち向かう第一の矢は琴平になりそう。昨春県大会準優勝投手の篠原 涼矢(3年)は「制球力が上がっている」と青野 靖監督も全幅の信頼をおく。篠原と新チームから正妻に定着した陸 昀(3年)とのバッテリーを生命線に、彼らは昨夏・第2シードから初戦負けの屈辱を晴らしにいく。

 反対側の山は激戦だ。動くボールで内野ゴロの山を築く髙畑 遼(3年)がエース、昨秋県大会3位で進んだ四国大会小松島(徳島)に大勝した高松一は、長尾 健司新監督の下、「考える野球」に取り組む高松商と初戦で激突。高松商は右手尺骨骨折で約1ヶ月半戦線を離脱していた4番・末包 昇大も先日復帰している。

「外角のバットコントロールは村田修一さん(巨人)、内角のバットコントロールは坂本勇人さん(巨人)を参考にしている」50メートル走6秒4・遠投105メートルの逸材が、高校通算10本塁打からの量産ができれば、このブロックの行方は一気に混沌とするだろう。

 さらに故障者がようやく復帰。センスの塊・西丸 泰史(3年)を代表格とする1年夏からのレギュラーと、「4番・一塁手」起用が濃厚。「一生懸命にガムシャラにやりたい」と気持ちを入れる宮川 魁成らの1年生が融合を果たした尽誠学園も、昨夏決勝戦で流した悔し涙をうれし涙に変えんと、日々鍛錬に暇がない。

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[page_break:3年ぶりの甲子園狙う英明がリード]

3年ぶりの甲子園狙う英明がリード

赤川大和(英明)

 1年秋から英明エース。四国屈指の左腕として名を馳せてきた赤川 大和(3年)が最後の夏をシード校として迎える。今大会は後ろに最速139キロの中西 幸汰(2年)、田中 寛太(2年)の2年生左腕たちも控えるが、やはり彼が大黒柱であることには変わらない。春季県大会や春の練習試合ではややボールをそろえる場面が目立ったが、「制球」と「制圧」とを兼ね備える本来の投球ができれば、3年ぶりの甲子園も視野に入る。

 打線に目を移しても「昨年秋から、今までの引っ張りからコースに合わせて打つ事を心がけている」50メートル走6秒0の俊足1番・松井 大樹(3年)や、威風堂々と左打席に立つ4番・松浦 仁(3年)など、タレントは県内屈指。

 まずは初戦の高松桜井戦で高松市立桜町中時代からバッテリーを組む左腕・宮下 幸大(3年)と主将・森 健輔(3年)をいかに攻略できるかがかぎとなりそうだ。

 2年前の覇者、昨秋県大会ベスト4香川西のこのブロックに。戦力的には昨秋県大会2ホーマーの呉屋 連(3年)など、英明らとも互角に戦える戦力がそろっている。ただ、それ以前に為すべきことがある。昨夏からの一年間で3人目・4月にコーチから転じた広澤 大成監督が、1年生部員3名と動揺が続く部内を統率できるかが、上位進出への最大かつ唯一のポイントだ。

 その他、スケール感のある林 信瑞磨(3年)が4番に座る高松中央や、一昨年の夏はベスト8に躍進した香川笠田などもトーナメントをかき回す存在となるだろう。

(文:寺下 友徳)

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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