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足裏を鍛えるトレーニングで、足裏の力はどこまで変わったのか? 【永久保存の実験データ】編!

2013.12.26

Player's Voice

 足のスペシャリスト、阿久根英昭教授の足裏メソッド、第5回。これまで、足裏の重要性とトレーニング方法、そして、実際に検証を行い、その結果を教えていただきました。

 今回は、その研究結果、阿久根教授によるレポートの詳細をお届けします。少し難しい言葉もあるかもしれませんが、より深く知れば、ますます足裏、足の指の重要性がわかるはず!貴重な研究データと共に、チェックしてみてください。

スポーツシューズによるトレーニング実施前後効果

足のスペシャリスト・阿久根英昭教授

目的

 短距離界のスーパースター・カールルイスのためのシューズ開発を機に、世界の各スポーツメーカーによるシューズの開発は、日進月歩の速さで進められてきている。その中、2004年、ナイキが開発したナイキ フリーは、これまで各メーカーでは成しえなかった「足力を高めるトレーニングシューズ」という画期的なものである。開発の目的は、機能的なシューズであっても、それを生かすための足力がなければ、シューズの良さも無意味になってしまうという視点にある。ナイキ フリーの特徴は、アウトソールに施されている縦横の溝にあり、足部機能である内反や外反、また足趾の屈曲、内転・外転など、まさに素足での動きを最大限に発揮させ足力を高める構造である。

 足底には8つの筋肉と2つの腱などの軟部組織が介在し、その全てが足趾につながっている。要するに、足趾を動かすことで足底にある全ての筋肉を鍛錬することができ、より高いパフォーマンスを生みだす「足」を形成することができるからである。

 

本実験では、ナイキ MVP フリー トレーナー エリートを履いてのトレーニング前と、約4ヶ月後の足部機能、またそのことによるスポーツパフォーマンスの実施前後の変化から、ナイキ フリーのトレーニング効果について検証するものである。

方法
 検証項目と検証方法は以下の通りである。

(1)足部機能
1. 足底圧力分布図
 足底圧力分布図は、静立時の足底各部位にかかる圧力分布状態、左右足荷重差、縦軸重心位置から、静立時の安定性と足部機能を検証するものであり、測定は、FPS(足底圧力測定器)を用いた。
2. 足趾力
 足趾力は、足趾の屈曲力を評価するもので、足趾力計のバーに足趾をかけ、屈曲した時の力を測定した。

(2)スポーツ・パフォーマンス

1. 50m走
 クラウチング・スタートで、50mの距離を走行した時のタイムを測定した。グランド(土)
2. 垂直跳びの変化
 リープメーターを用いて実施。測定は2回で記録の良い方を採用した。
3. 反復横とび
 ライン間1mとして、20秒間での回数を測定した。

(3)検証期間・被験者
 トレーニング実施期間は、7月19日より11月21日までの約4カ月間。
 被験者は、野球部員4名で、ポジションは投手、捕手、内野手、外野手である。

検証結果は次のページで!


検証結果―足底圧力分布図・縦軸重心位置―

結果と考察
(1)足部機能
 足底圧力分布図は、静立時の足底各部位にかかる圧力で、赤色が最も強く、青色が最も弱い圧力を示している。そして、足部機能では、踵部、母指球部、小指球部、足趾に強い圧力がみられること、左右足荷重値差もほぼ0%に近い数値であること、縦軸重心位置も53%前後に位置していることを理想的な足型としている。

4選手それぞれの足底圧力分布図

1 . 足底圧力分布図
 実施前に比べ実施後の変化は、被験者四名とも前足部と足趾に強い圧力がみられる。これは、足底の前足部や足趾を、より使えるようになったことの証と考える。

2. 左右足荷重差
 実施前に比べ実施後の変化は、被験者全員の左右足荷重差が小さくなっている。これは、静立時の左右足のバラ ンスの確保できるようになったことの証と考える。

3. 縦軸重心位置

 
縦軸重心位置は、踵「0%」、つま先「100%」とした時の前後のバランスを評価するものであり、前方への効率的な重心移動を可能にする理想的な重心位置を53%としている。
 実施前に比べ実施後は、被験者の平均数値が理想的な53.87%に変化しており、より効率的な重心移動が可能になるものと考える。
 
足部機能の評価については、足底圧力分布図にみられた強い圧力、左右足荷重差によるバランス保持、効率的な縦軸重心位置などの変化は、足部や足趾の機能を高めた証であり、ナイキ フリーを履ことによるトレーニング効果の現われと考える。

検証結果―足趾力―

結果と考察

(2)足趾力
 足趾力とは、動揺に対するバランス保持やスポーツパフォーマンスなどの原動力であり、瞬時の総合的な動きの良さを評価するものである。
1. 足趾力
 
トレーニング実施前に比べ実施後の変化は、左右足趾力ともに強くなっている。これは、足部機能にみられたナイキ フリーによるトレーニング効果の信憑性を、さらに高めたものと考える。
 


検証結果―スポーツパフォーマンス―

 

(3)スポーツパフォーマンス
 ナイキ MVP フリー トレーナー エリートを履くことによるトレーニング効果を、50m走、垂直飛び、反復横飛びなどのスポーツパフォーマンスから総合的に評価検証したものである。

1. 50m走
 実施前に比べ実施後の数値は、個人により異なるものの、平均値で0.06秒ほど短縮されている。

2. 垂直跳び
 実施前に比べ実施後の数値は、50m走と同様個人により異なものの、平均値で0.65cmほど下回った。

3. 反復横飛び
 実施前に比べ実施後の数値は、全被験者が上回っており、平均値でも5回程上回っている。

 スポーツパフォーマンスの評価について、垂直跳びで低下の傾向がみられるものの、50m走と反復横とびの2種目では、実施後の記録が上回っており、反復横飛びでは被験者全員の向上が認められた。スポーツパフォーマンスは、足部機能を総合的に評価するものであり、これらの結果もまた、ナイキ フリーを履ことによるトレーニング効果の現われと考える。 

まとめ

 本実験では、ナイキ MVP フリー トレーナー エリートを履くことによる足部機能のトレーニング効果の有無を目的として検証を行った。結果、被験者数の少なさやトレーニング期間の短さなどにより、有意な結果を得るまでには至らなかったが、足部機能やスポーツパフォーマンスなどから考え、ナイキ フリーを履くことによるトレーニング効果が少なからず確認できたものと思われる。

―――いかがでしたか?普段なかなか見られない、本格的な検証と、その結果、考察。興味深く見られたのではないでしょうか。阿久根教授、ご協力いただきありがとうございました!
 みなさんも、足裏を鍛え、ますます野球の上達に結びつけていきましょう!

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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