Column

【三年生座談会】県立柴田高校(宮城)

2013.09.02

僕らの熱い夏

打倒・仙台育英を掲げ、苦しめた柴田高校(宮城)

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 今年の宮城大会で11年ぶりに決勝を戦った柴田。ノーシードから勝ち上がり、仙台育英との決勝では初回に5点を奪って主導権を握った。しかし、徐々に追い上げられ、9回裏2死満塁で押し出し四球を与えてサヨナラ負け。甲子園には届かなかった。
 昨秋も、今春も、そしてこの夏も、柴田の行く手を阻んだのは仙台育英だった。昨秋はコールド負け。一冬、辛い練習に耐えた成果は、春に1点差の惜敗で表れた。春も夏も仙台育英を最も苦しめたのは柴田だった。
 打倒・仙台育英を掲げた柴田の歩みを振り返ってもらった。

座談会メンバーを紹介!

三浦 大希:主将・捕手 174cm、70kg 右投右打。
「キャプテンでしたので統率力があって、チームを引っ張ってくれました。(チームに関する指摘を)私に言われないように、私の動きを先取りしていましたね。試合では、悔しがらせながらやったこともありました。泣きながら試合をやっていたこともありましたね」(平塚監督)

岩佐 政也:投手 174cm62kg右投右打。
「ヤンチャなところはありましたが、強気なピッチングが持ち味でインコースを攻められるところがよかったですね。球速は速くないのですが、2年生から攻めるピッチングができるようになって、強い精神力を感じました。内角を攻められなければいいピッチャーにはなれないと勉強させられました」(平塚監督)

鈴木 勝也:三塁手 175cm75kg右投右打。
「勝也が後輩に最後、言っていたのは『信じることだ。余計なことを考えないで信じてやれ』。去年の秋に仙台育英に負けたのがきっかけか、2年冬から私のことを信じ始めてくれました。打撃も上向きになり、チームを引っ張っていけるようになりましたね」(平塚監督)

新山 博希:左翼手 172cm63kg右投右打。
「生徒会長もやりながら、地道に努力を積み重ねてレギュラーを勝ち取った選手です。入学した時は、レギュラーどころか、ベンチにも入れないのではないかと思っていました。2年生の時は、しっかりまとめてくれるだろうと思って、Bチームのキャプテンを任せました」(平塚監督)

桜田 真悟:右翼手 170cm65kg右投左打。
「神懸かり的なところがあります。守備はいいのですが、打撃が弱くて守備固めのようなところはありました。この夏の東北学院戦でも、1対1に追いついた9回裏に一死二でバックホームしてアウトに。そういうところがあって、仲間からは「真悟マジック使え!」なんて言われていましたね」(平塚監督)


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最後の夏を終えて

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――高校野球を終えてどうですか?

鈴木勝也(以下、鈴木) 初めて、まともな夏休みだったんですけど、やっぱり、野球・・・甲子園ばかり観ていました。

――みんな、甲子園を観ていたんですね。観ている時はどんな心境なんですか。

三浦大希(以下、三浦) 自分たちが甲子園にいたら、どういう戦いをしていたかな〜とか。

新山博希(以下、新山) とりあえず、仙台育英浦和学院が・・・(浦和学院柴田が)同じユニホームだから(苦笑)浦和学院が負けた時は複雑な心境だったよね?

三浦 やっぱ、また、負けたって(苦笑)仙台育英浦和学院の対戦が決まった時は、運命だなと思ったね。

鈴木 どっかで繋がっているのかなって、勝手に思ってた。仙台育英に勝ってほしいなっていうのはありましたが、浦和学院の選手の後ろ姿を観ていると、後ろ姿は自分たちを見ているようで(苦笑)

新山 負けたの、複雑だったよね。

三浦 しかも、同じサヨナラで負け(苦笑)

岩佐 政也

――さて、今日の座談会参加者をそれぞれ紹介してもらえますか。まずは、岩佐君。

三浦 野球をやっているととてもカッコイイですね。

新山 はっちゃける時ははっちゃける。

鈴木 政也は、オンとオフの切り替えが上手いと思うよ。相手が強いほど、向かって行く気持ちが守っていて伝わるので、攻めの気持ちを出している時は安心があったし、カッコイイなと思ったね。

三浦 それはある。あと、自分を持っています。(捕手である)自分のサインにうなずくだけでなく、自分の信じている球を投げるために首を振って。それもちゃんと決めてくれました。心が動かないで勝負強いところがあると思います。

新山 お前、決勝戦、緊張してた?

岩佐政也(以下、岩佐) 緊張はしてない。楽しみでしょうがなかった。

新山 すげぇな。俺、1個のおにぎり食べるのに3分かかったよ(笑)

三浦 大舞台になるほど、リラックスして投げていたよね。

――では、三浦君は?

岩佐 キャプテンとして、チームで1番、頼りになる選手でした。自分たちはバッテリーで、1年から組んで来たのですが、意思疎通できて、投げたい球を投げられました。キャッチャーとして引っ張ってくれたし、キャプテンとしてまとめてくれて、いろいろあったんですけど、チームのために人一倍、努力してくれました。いいキャプテンだったと思います。

鈴木 練習が大好きだったね。冬に9時から練習で、自分が1時間前に来るともうグラウンドでティーを打ったりしていました。その後、1日きつい練習があるんですが、終わった後も最後までやっていましたので尊敬しています。

新山 練習もそうだけど、勉強は学年1位とかとっていて、才能がありすぎて分けてほしいくらい(笑)ピアノも弾けるし。練習が終わった21時過ぎに「今日、ピアノだから」って。今から行くの!?って感じでした。

――鈴木君は?

桜田真悟(以下、桜田) 自分、幼稚園からずっと一緒なんです。小学校で同じくらいから野球を始めました。上手くいかない時も引っ張ってくれて、尊敬できて頼れる人です。

新山 自分は、正直言うと、勝也がホント大好きで(笑)男として本当に尊敬できるんです。ミーティングでの発言がかっこよくて、こういう風になりたいな〜と毎回、思っていました。格言メーカーです(笑)

三浦 (キャプテンとして)自分がいろいろ言って、周りから意見を聞くと、勝也だけ違う視点から見てくれているので、頭が回る人だなと思っていました。

岩佐 打線の主軸として、勝也は4番でもおかしくないバッターだったんですが、平塚先生もあえて3番に置いていました。1年生からベンチに入って、チームの中心としてやってきて技術面、バッティングのことはチームでは誰も勝てなかったと思います。いろんな目線で意見を言ってくれてチームとして向上できたと思います。チームの柱です。

三浦 練習が中止になって、集まった時にポツンと言うんだよな。一人一人から意見を聞くと、勝也が確信をつくようなことを言うんです。

新山 困った時に勝也を見ちゃう(笑)

鈴木 その時、思ったことを言っているだけです。みんな、同じようなことを言うんですが、それは間違っていないんですが、当てられるまでに自分の考えを持っておくようにしていました。

桜田 真悟

――桜田君は?

三浦 真悟は不思議だね、やっぱり。(仙台育英の)馬場ワールドがあるなら、真悟ワールドでした。

新山 最初は怖かったけど、踏み入れたら、真悟ワールドだよね(笑)独り言多くて、外野ノックで納得いかないと、「違うんだよな〜、違うんだよな〜。なんで、これができないのかな〜」って、一人で怒っている。それが面白いんだけどね。

三浦 でも、芯があってミーティングでも自分の考えを言ってくれた。あとは、打席でも守備でも、何か起こしてくれるという期待を持てたね。公式戦でもバックホームで2回刺して、練習でできたことを試合でもできたのは、練習と試合の差がなくて、いつも練習に全力だったからだと思います。

鈴木 静かなように見えて、自分なりの考えを持っていました。表に出さなくて、先生に「気持ちが見えない」と言われることもあったんですが、本人の中では心は熱かったと思います。見えにくい部分はあったと思うんですが、心に秘めて試合に臨んでいたと自分は信じています(笑)

桜田 ズバリですね。あまり、表に出さないというか。自分の中で燃えているタイプだったので。先生に「気持ち見えねぇんだよ」って言われたこともあったのですが、ズバリ、言ってくれたと思います(笑)

――最後、新山君は?

一同 この学校の生徒会長!

三浦 小学校6年生の時に少年の船に参加して一緒になって、たまたまバスの空いている席に行ったら一緒になって。

新山 運命だよね。

三浦 高校も入学してわかって、仮入部の前に新山のところに行って、「野球部に入ろう」って言いました。

新山 入るつもり、なかったんですよ。中学まで野球はやっていましたが、高校では別にいいかなって思っていたんです。柴田、強いし。大希に「県選抜そろっているし、一緒に野球をやってみない?」って言われて誘われて、とりあえず、見に行くだけ行ってみるかと思ったら、3年間が終わっていました(笑)

三浦 最初、細くて小さくて。自分たちの代で一番、成長しました。しっかり考えを持って、バッティングも守備もすごく考えて取り組んでいました。

岩佐 自分たちは体育科なんですが、(新山は)普通科で、文武両道をしっかりし、今は生徒会長で学校もまとめています。1番バッターとして、切り込み隊長として出塁率も打率も高くて、いつもチームの勢いを作ってくれました。

桜田 本当に細くて、こいつ、やっていけるのかな〜って思いました。Aの主力の試合にもなかなか混ざれない時期があったのですが、Bの試合でキャプテンを任せられるようになってからどんどん成長していきました。(去年の秋に)新チームになって試合に出るようになってから、結果を残して、3年生になったらどんどん、成長していって、いつの間にか抜かされていました。

鈴木 自分、最初、外野だったんです。一緒にキャッチボールをしたりノックを受けていて、普通にやったら自分は負けないなって思っていました。2年生になって、Bのキャプテンが新山になって、自分はAでやっていたのですが、新山の結果を聞くのが楽しみでした。新チームになってプレーを見ると変わったなって思って、他の人に比べたら中学校の実績はないと思うんですが、3年間をトータルでみると、中学の実績は関係なくて、高校に入ってからどういう選手になりたいかを考えて一日、一日を過ごした人が最終的にいい結果を残せたのかなと新山を見て感じました。

一同 いいね。カッコイイ(笑)

三浦 いつも、こうやってまとめてくれるんです(笑)

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ハードな練習を越えて

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――1年生の頃はどうでしたか。

三浦 ずっと一緒にいたよね、1年生の頃。体育科に普通科の2人も来て、休み時間とか昼休みとかに体育科に全員で集まってご飯食べたり。

鈴木 軟式上がりなのでボールが変わって、バッティングとかでも打てなかったり、野球技術の面で上手くいかないなというのがありました。

三浦 あとは体。体ができていない中で走ったり、トレーニングしたりして。

岩佐 変化球の曲がり、ボールのヤマのかかり具合が違ったので、最初の方は苦労しました。

――2年生になってからはどうでしたか。

鈴木 夏はベスト8で、コールドで負けてしまいました。自分はレギュラーで出ていたので悔しい思いはありました。ただ、先輩には失礼かと思いますが、新チームになって、次の日からやってやるぞって気持ちで、引きずることはしないで次へ向けてやっていこうという気持ちはありました。新チームになって、正直、秋の大会は東北大会に行けるなと思っていました。そしたら、仙台育英に準々決勝で0—7、7回コールド負け。正直、そんな風に負けると思っていなかったので、こんなに違うのかとその時は思いました。自分たち、全然だなって、結構、凹みましたね。

三浦 そっからだよな、変わったの。打倒・仙台育英!って。先生も厳しくなって。仙台育英は東北大会で優勝して、明治神宮大会も優勝して日本一になって。日本一が宮城県にできちゃった・・・あれ?って。

鈴木 自分は、あのレベルが日本一だったら、仙台育英と互角にやったり勝てたりすれば全国でも通用するな思いました。仙台育英が神宮で優勝して凄いなというのと同時に、育英とやり合えれば、全国でも通用するなと。

三浦 大希

――凹んだ秋だったわけですが、冬の練習はどうでしたか?

新山 走ったよね。きつかったよね。

三浦 自分たちの代は2、3日でやっていたきつかったメニューを1日でやっていました。みんな、叫んでいたよね。

鈴木 とにかく、走った。近くに坂と3つの山があって、日替わりで行って、ダッシュとかやって帰ってきて、そこから素振り、サーキット、タイヤ押しとかのメニューをやりました。

新山 足、破壊されてたよね。

鈴木 周り(他校)がどれくらいやっているか分からないので、冬の練習は自分との戦いかなと感じながら。自分に負けちゃダメだなって思って、自分たちは自分たちできついと思っているんですが、周りはもっとやっているかもしれないので、自分には負けないと思ってやっていました。

三浦 リーダー研修会(関連記事:第9回宮城県高等学校野球連盟 リーダー研修会)とかで集まって、トレーニングの話しとかしたんですが、(他校のキャプテンに)話しを聞いたら、あれ?みんな、こんなもん?って思いました。それで、自分は自信が付いたのですが、それをなかなかチームに伝えられませんでした。でも、伝わらなかったから、よかったのかもしれません。みんなで声をかけて励ましてやって、脱落者もいませんでした。班に分かれてやっていて、その班でしっかり、またその中で絆が生まれて。

新山 3班だったんですけど、勝也、大希、政也がリーダーで。

三浦 盛り上がるチームと、しっかり黙々とメニューをこなすチームと、メリハリがあるチームとありましたね。

鈴木 毎日、同じメニューじゃなかったので、気持ちを切らさずにできたと思います。

――かなり鍛えられて迎えた春はどうでしたか。

三浦 また準々決勝で仙台育英と対戦して1—2で負けたのですが、勝てた試合でした。秋と違ったのは、「仙台育英だ」というのはなかったですね。

岩佐 ユニフォーム負けをしませんでした。秋は「仙台育英だ」と思って、引いてしまったところはあったと思うんですが、春はみんなが倒そうという気持ちで1つになれたので向かっていけたかなと感じました。

新山 流れは作っていたよね。

三浦 ずっとこっちペースでやっていたつもりが、終わったら、1—2で負けていたって。力を出し切れていなかったのかなという感じがありました。それでも、誰一人、落ち込んではいませんでした。ここからまた、やっていくぞって。夏はいけるというか、気持ちは前に向いていました。

――そうして夏を迎えるわけですね。

新山 まずは利府だったよね。利府には絶対に負けないって。

岩佐 そうだったんだけど、途中、利府が9回辺りで負けているって聞いて、ウソだろって思いました。先生も関係者の人と時に聞いたらしく、え!?ってなっていました。もしかして、利府、負けるんじゃね?ってなって、そしたら、そのまま負けてしまって。

三浦 白石工利府に勝って勢いに乗っているというのは噂で聞いていて、心の中では正直、やべんじゃね?って思っていました。

鈴木 俺らも負けたら終わりだからな。利府が負けたとかそんなこと言っていられない。自分たちも負けたら終わりなので、どこが来ても勝ち上がるしかないなというのはありました。

三浦 白石工の後は、東北学院?あれは負けたと思ったね。

鈴木 東北学院戦は1点ビハインドで9回だったんです。自分は打てなくて何もできなかったんですが、負ける気はしませんでした。9回表に4番の宗方(直輝・2年)がノーアウトからヒットで出て、(6番の)大希もヒットで続いて、同点になって延長戦になって。負けると思った?

三浦 いや、これで終わんのかな〜って思ったけど、負ける気はしなかった。でも、終わりが見えなくて、これは(ベスト)16か〜?って。

新山 (9回裏、1死二塁でライトの)真悟のところに飛んだ時は終わったと思ったよね? 負けるかもと思ったら、真悟のナイス送球。

桜田 毎回、チャンスを作っていたんですけど、なかなか一気にいけなくて、これで終わりかな〜って思っていたんですけど。

三浦 (9回表裏に守備妨害や走塁妨害など)いろいろあったからね。でも、心を動かさないで、9回裏もチェンジなんですけど、審判が説明している間、全員が残って、俺らが一番、冷静だったよね。監督もそれを見て、抗議をするのを止めたので。そういう面では心を動かされなかったね。

新山 オフトレ(オフのトレーニング)の成果じゃない?

――準々決勝で宮城農に7-0で勝ち、準決勝は仙台三でした。

鈴木 (仙台三は)春に東北大会に行っていて、自分たちより格上というのはあったんですが、直接はやっていないので、思いっきりぶつかるだけだなっていうのはありました。初回に先制点を取れたので、自分たちのペースでできたと思います。

新山 政也がよく抑えたと思うよ。

三浦 政也と途中、「真っすぐに振り遅れてね?」って話して。そんなに警戒するような話しはしていませんでした。

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[page_break:仙台育英との決勝戦]

仙台育英との決勝戦

――仙台育英との決勝戦になりました。

鈴木 球場には練習してから行ったんですけど、その練習もいつも通りすぎて。勝ったら甲子園だとか、負けたら引退だとか、そういうのはなくて、秋も春も負けている仙台育英ともう1回、やれるということで嬉しかったです。3度目の正直でひっくり返してやろうって。みんな、楽しみの方が大きかったと思います。普通過ぎて。行きのバスの中も、練習試合に行くような雰囲気でした。球場に着くと、キュッとみんな、変わったんですけど(苦笑)球場見て、着いたってなってから。13時プレーボールだなって。

三浦 それはあったね。あと何時間かしたら結果は決まっているんだなって。アップで時計を見ながら思いましたね。

桜田 自分はスタメンじゃなかったので、スタメンの人たちよりは気持ち的には楽だったというか・・・全然、ご飯も食べられて(苦笑)

新山 博希

――プレーボールがかかり、1回表に5点を取りました。

鈴木 (仙台育英の)馬場は立ち上がりが悪いので、先制点を取ろうという話しは監督としていて、1点でも取っておけば、自分たちのペースでできるんだって考えてやっていたら、繋がりに繋がりました。

新山 (1番の)自分が出て(一失)、葛西も出て(四球)。

三浦 (3番の)勝也が、まさかの送って。あの場面、練習試合で送ったことある? 1回か2回しか見たことない。

鈴木 公式戦でバントしたの、多分、初めてか2回目くらい。でも、あんな重要な場面でやったのは初めて。生涯初だね(笑)でも、大会中には大事な場面では送りバント、あるなと思っていたので、練習からそういう意識を持ってやっていたので送れたかなと思います。

新山 バント、めっちゃ練習したよね。

三浦 フリーバッティングの間、前は素振りとかだったんですが、夏の大会が始まってからずっとバント練習という形になったんです。その結果、しっかり、勝也が送って。

――その後、4番・宗片君がファーストのエラーを誘って1点を先制。さらに5番・松崎賢太君がレフト前ヒットを放って2点目を奪い、6番の三浦君に打席が回ってきましたね。

三浦 狙ってはいたんですけど、自分は流れで初球を。ボール来ました、はい、打ちました、抜けた〜って感じでした(笑)最初、(センターの上林)誠知に捕られると思ったんですよ。切れて行って抜けたって。でも、あの歓声を受けたのは嬉しかったですね。あの歓声は生涯でもうないですね(笑)あの後、政也も凄かったね。3イニングね。

新山 (1番の)熊谷(敬宥)を三振にとって、(2番の)菊名(裕貴)を三振にとって、長谷川は何だっけ?

三浦 ピッチャーゴロ。

鈴木 初回に5点を取ったんですけど、(仙台育英が初回に5失点した)大崎中央戦を見ていたので、ちょっと、ん?と思ったんです。絶対に気を抜いちゃダメだなってベンチで話していました。

三浦 仙台育英大崎中央の試合で見ていたので、一瞬、頭を過って、やべ〜なっていうのはあったんですが、政也が3イニングをゼロに抑えてくれて。あと1点取れればいける、政也のために1点取ってやろうというのを言い続けていました。(4回途中から、仙台育英は鈴木)天斗が出て来たのですが、天斗の方が打てるという話しはしていました。コントロールがいいのでストライクゾーンに来たら打とうという気持ちだったのですが、意外といいボールがきていて、連打がなくなりました。馬場は2、3回で降ろして、よし、天斗だから、ここからと思っていました。馬場が立ち直って来た時に代わって、よっしゃー、いくしかないって感じでベンチも盛り上がったんですが、天斗にやられちゃいましたね。気持ちは向かっていっていたので、仙台育英のエースのプライドだったりそういうものにやられたなというのはありました。

岩佐 僕は投げていて、楽しかったです。でも、いつかは(反撃が)来るかなというのはありました。仙台育英は1番から9番まで、どこからでも打って来るので気は抜けませんでした。決勝は球数なんて関係ないと思っていたので、投げられるボールはどんどん投げて行こうと、そうやって投げた結果、3回まではよかったのですが、仙台育英のバッターに球筋を見られるようになって上手くやられたなと思います。

――5—5の同点で迎えた9回裏、1死一、三塁で4番・上林君を敬遠しました。

岩佐 正直、打たれるなら上林に、気持ちよく打たれた方がよかったかなというのはあります。でも、チームの勝利のためと思って、気持ちを切り替えて向かって行こうと思って投げました。前の打席でホームランを打たれて、その前にも満塁で(2点適時打を)打たれて。ここで抑えたら、仙台育英も沈むだろうし、こっちは一気に波に乗るだろうなという思いはあったんですが、打たれていたので、どんな監督だろうと、あの場面は敬遠しろと言うと思います。

鈴木 1点取れば流れが変わるなというのはあったんですが、なかなかランナーを出せなくて。手も足も出なかったな。

――最後は、2死満塁で小林遼君にカウント3—1から四球。押し出しでサヨナラ負けとなりました。

鈴木 勝也

三浦 自分は、政也が投げる瞬間に、終わったって思いました。リリースが明らかに高かったので。でも、凄い伸びて、最後はしっかり(ミットの)芯で捕って終わったので。最後、なんていうんですかね、力尽きた感というか、やりきって終わった感じがあったので、自分は全然、悔いはなかったですね。打たれて終わるよりは、最後、指に掛かったいいボールが来て、自分の中では最高の終わり方が出来たかなと思います。

岩佐 いつものリリースポイントじゃないところで投げたというのはすぐにわかって、投げた瞬間に「あっ」と思いました。あの時点で、持っている力は出し切れたと思います。投げたボール的には良かったんですが、疲れが出て高めに浮いたのかなという感じでした。

新山 政也らしいなと思った。長打を打たれて散るよりも、政也が全力で投げたので。

桜田 自分たち、打てなかったんですけど、政也ならと期待していました。最後、フォアボールになって、今まで政也がずっと投げて来たので、政也ならしょうがないというか。政也らしい終わり方だったなと思います。

鈴木 明らかに球がおかしくなっていたのは、キャッチャーじゃなくても分かっていました。本当なら違うピッチャーに変わるんだろうけど、そこは、自分が監督でも、ここまで政也が1番を背負って投げて来たので、あのマウンドは政也だけのものだなと思っていました。野手が応えられなかったことに後悔は残っているんですが、気力で、みんなのためにって気持ちで投げていたので、押し出しで負けたことは全然、気にしていません。やってきたことは全部、出し切れたと思います。

岩佐 2年の夏に自分が投げて、利府に負けて、ボコボコに打たれて負けました。あの時は緊張して足も震えて、思う投球が出来なかったんです。来年はこのマウンドに戻って来て、決勝で投げてやると思っていていたので、最後にあのマウンドで、背番号1を背負って投げられたので良かったのかなと思います。自分は(東日本大震災の津波で)家を流されました。(高校3年間で)親に迷惑を掛け続け過ぎたかなっていうところもあって、最後は甲子園に連れて行きたかったのですが、自分の持っている力を親に見せられたかなって思います。

――秋、春、夏と、みんなの行く手を阻んだのは仙台育英でした。

鈴木 最初は、あの代の仙台育英じゃなかったら自分たちも良い所までいけたんじゃないかって思うことはあったんです。秋にコールド負けして力の差を感じてから冬とか頑張れました。秋はコールド負けで、春は1点差で、夏はサヨナラ負けだったんですけど、しっかり、仙台育英の背中が目の前まで来て、明治神宮大会で優勝して、センバツでベスト8までいって、上林が主軸で、あの代にあと一歩の所まで行けたのは良かったと思います。あの代の仙台育英じゃなかったら、自分たちもそこそこの結果で終わっていたと思います。

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3年間やってきたことは間違っていなかった

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――3年間の練習でこれがよかったなというのはありますか。

三浦 13mバッティングですね。フリーバッティングで、ケージとピッチャーとの距離を18mではなく、5メートル詰めて、本当のピッチャー陣が真っすぐも変化球もミックスして打つというのです。ただ打つのではなく、低めは見逃して、真ん中の甘い球をボールに合わせないで自分の間を作って振りに行くというのを意識してやっていて、勝負形式でやっていたので、ピッチャーとの駆け引きとか打つべきボールを打つというところが最後の夏に出たというのはあります。馬場から打ったのも、甘い真っすぐを打って、低めの変化球を見逃せたというのがありました。

鈴木 スピードに対応できました。近い距離で速いボールを見ているので、140キロ近くでも速いなという感じはしなかったので、馬場の時もしっかり振れていたと思います。みんな、130キロを超えても何とも思わなくなって、スピードにも慣れたし、速いボールでも自分のスイングをするっていう面では凄く良かったと思います。

三浦 ケースノックでは、全部のランナーを置いたケースを想定してやるんですが、打球とランナーの動きに応じて判断力を磨きました。野手はすべての流れというのもを感じてプレーしないといけないので試合を想定して、アウトに出来ないところは指示を通して次に切り替えてやるということができました。試合の流れでできるようになりました。最初はここ抜けたら、こうだろうとか、決めつけてやっていたのが、一人一人が柔軟に対応して頭の中で想像を働かせてできたのが良かった所だと思います。

桜田 ケースノックのお陰で、試合でも、練習でやったケースだから、ここにこう投げて、その後カバーはこうすればいいとか、意識をしなくても自然に体が動いていました。

――こういうことをやっておけばよかったなという事はありますか。

新山 もっと体を大きくしたかった(笑)線が細いって言われてきたよね。

三浦 そこかな。食トレとか。練習量と食べる量が比例できなかったので。

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――柴田高校でよかったですか?

一同 良かったです!

三浦 平塚先生は野球に関して全力で自分たちのことを考えてくれました。言いたくないこともあったと思うんですけど、心を鬼にして言ってくれた部分もあったし、自分たちの中で気持ちの面で燃えるところもありました。そういうところがあったので、褒めたもらった時に満足感というか、また頑張ろうってやれたので、ムチの方が多かった気がしますが(笑)その分、飴の部分もありましたし、最後、準優勝というものを勝ち取れたので良かったです。

鈴木 1、2年より人数は少ないけど、10人だったから。

新山 一番、団結力あったしね。

鈴木 一人一人を分かっていたしね。

三浦 いろんな意味で意思疎通ができて気持ちが1つになっていたね。

鈴木 10人だと仲良すぎて、違うだろと思っても言えないこともあったんですけど、それも相手のためを思ったら言ってあげた方がチームのためにも本人のためにもなると先生はいつも言っていたのでそれを信じて言わなきゃいけないというのもありました。

三浦 それが友達としての本当の優しさだと。

新山 3年間が、メダルという形で残ったのが良かった気がします。

鈴木 甲子園には行けなかったけど、3年間、やってきたことは間違っていなかったし、本当に努力は裏切らないと思います。やった分だけ結果は出ると思うし、甲子園には行けなかったけど、公立魂というのは見せられたと思います。3年生は、悔いはないと思います。

一同 拍手

(取材・構成=高橋 昌江

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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