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佐竹 功年投手 (トヨタ自動車) 「マウンドを制する術」

2014.04.25

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 社会人野球の強豪・トヨタ自動車の主戦として活躍を残し続ける佐竹 功年投手。土庄高時代は、春季大会でノーヒット・ノーランを達成。その後の早稲田大では、150キロをマーク。身長169センチ、小柄な速球投手として注目を集めてきた。今回は、そんな佐竹投手に、「マウンドを制するための術」をたっぷりと伺いました。

野球漫画も、プロ野球番組も、上達のための参考にした学生時代

トヨタ自動車 佐竹功年投手

――佐竹投手といえば、土庄高時代は、3年間で球速16キロアップしています。当時は、どんな意識で練習や試合に取り組んでいたのでしょうか?

佐竹功年投手(以下「佐竹」) 常に、ビジョンをもっていました。高校に入る時に松坂大輔投手(ニューヨーク・メッツ)をみて、150キロ出せば甲子園に行けるんだ!と思ったんです。それが甲子園の近道だと思っていました。
 もともと、球もそれほど遅くはなくて(当時130キロ)、体も小さくて細かったので、まだ伸びしろもあるかなと考えていました。結果的に高校3年生の時は146キロまで出せるようになりました。

――投げ方はどう学んでいったのですか?

佐竹 投げ方に関しては、監督やコーチなどいろんな人に教えてもらいましたが、マンガから学んだ部分も大きかったですね(笑) 『風光る』など、当時は読んでいました。
 体全体を使って投げるとか、技術的なことも、正解かは分からないけど、きっかけになりました。『これ、こうしてみよう!』とかそういう材料になりました。
 僕は球速を出すには、体の大きさよりも使い方だと思っているんです。あとは、肩甲骨と肩の柔軟性が大事だと考えています。

――投手としての戦術面は、どう学んでいったのでしょうか?

佐竹 とにかく野球が好きだったんで、プロ野球は、ほぼ毎日見ていて、そういうので自然と覚えていくんですよね。『今のは違うだろ』とか、オヤジの意見を耳に入れつつ。
 だから、マウンド上では、何も考えずにやるということはなかったですね。試合中も、配球は、ほぼ自分で決めていました。

走り込みトレーニングを行う佐竹投手

――試合中も考えられる投手になるために、佐竹投手は、日頃、どんな意識を持っていたのですか?

佐竹 ピッチャーって打たれないときって分かるんですよね。この指のかかりで、最高のイメージ通りのボールを投げられれば打たれないっていうのが。それを練習中は、数多くするように意識してやること。ただ、100球投げろといわれて、投げるのと、そうやって積み重ねていくのでは違うかなと思います。
 また、投手としてのノウハウを積み上げていくためには、バッターをみること

 キャッチャーのサインに、ただうなずいて投げるのと、キャッチャーはどういう意図でそのサインを出したのか、分かるのと分からないのとでは、結果もそうですけど、そのあとにも影響してくる。
 何も考えずに、外まっすぐ投げて打たれるのと、ちゃんと意図を持ってボール気味に投げようとか、ストライク気味に投げようとするのとでは、その結果、打たれたとしても、そのあとにキャッチャーと会話ができる。そこが大事なんです。

――高校時代から、そこまで考えていたんですね。

佐竹 そうしないと、勝てなかったんです。僕は、勝つためにやってたんで。

 自分が抑えるためより、チームのためにやっていました。だから、ここは三者凡退で帰らなきゃいけない、ここは三振とって帰らなきゃいけないとか。それは、強豪校でないからこそ、弱いものだからこそ考えなくてはいけない“手段“です。

3ヶ月間、死ぬ気でやれば人生は変わる!

――佐竹投手は、投球時の“足”の使い方をどう考えていますか?

佐竹 今の僕の考え方ですけど、基本的には僕が1つポイントにしているのは、『(右投手であれば)右膝が内側に入らないこと』。最後は入りますけど、足を上げていくときに入っていかない。あまり膝を曲げすぎない。そこだけですね。
 同様に、バッターも同じ部分を見ます。膝が入っていくバッターは打たれない、大丈夫だなって。
結局、膝が入ることによって、(体重移動の瞬間の)股関節の移動距離が短くなるので力が出ていってしまう。ピッチャーは、速い球を投げたいので、細いピッチャーに速い球を投げろっていわれたら、ここ(体重移動している距離の間)でスピードを出すしかないんですよね。
 あとは、フィニッシュの瞬間に、左足1本で内腿(うちもも)がしまって投げていればいいですが、そこを特に意識して投げてはいないです。投げたあとに、1本で立てたら今日は、いいな。できなかったら、どこか修正したほうがいいかなというくらいですね。

第84回都市対抗野球大会でのピッチング

――学生時代のアドバイスなどで今でも大事にしていることはありますか?

佐竹 僕が、大学生の時は、『骨をイメージしろ』と言われました。『骸骨(がいこつ)が投げていると思え』と。それを言われて分かったのは、社会人4年目になってから。
 骨盤は、足あげてから、投げ切る最後の最後まで動かない。
 それを先ほどの話で、膝が入ってしまう時点で、骨盤が傾くので、この時点で開いてしまうんです。それだと、パワーロスになるんですよね。

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マウンドの傾斜が合わない時などのテクニカルアドバイス

マウンドの傾斜が合わない時の心構えについて語る佐竹投手

――マウンドの傾斜が合わない時は、どう対応していますか?

佐竹 僕も、大学の時にそう感じたことが何度かありました。でも、それで気付いたんです。マウンドの傾斜が合わないというのは、結局は、『自分の投げ方が悪い』ってことなんだって。突っ込んで投げていたりするんですよね。
 これは、イメージですけど、右足に体重が乗ったまま、体重移動していって、地面に足がついてから投げているので、傾斜って本来関係ないんです。キャッチボールだって、平地で投げても普通に投げられるし、マウンド上でも同じフォームで普通に投げられる。だから、どんな傾斜であっても投げられるものなんです。
 傾斜が合わないと感じるのは、投げ方が悪いから傾斜が合わなく感じる。もし、そう感じたなら、それは自分で修正方法を見つけて直すしかないですね。
 練習試合などで、傾斜が合わない時に、どうやって投げるのかを考える。
「今日は傾斜が合わなかったわ~」で終わるのか、おっ、今日は傾斜が合わないから、なんとか修正できるようにやろう、と思うのか。プロが使う球場だって違うけど、みんな工夫して自分なりの解決方法をもっています。だから、早く自分で修正するにこしたことはないんです。

――佐竹投手は試合中、相手投手が掘ったマウンドの跡は気になりますか?

佐竹 僕は毎回、穴を埋めています。相手が左ピッチャーであっても、全然関係ないところでも僕は埋めます。例えば、そこに打球が飛んできて、ボールがはねて内野安打になるのは嫌ですし、あとは相手投手の心理的にも、埋められるほうが嫌だなと思って、やっています(笑)。

――試合の中で、審判と合わないなと感じる時はどうされていますか?

佐竹 今のストライクでしょって思う時もありますが、割り切るようにしています。そこに余裕がないということは、自分に自信がないこと。
『次、ストライクを取ればいいだけでしょ』っていうくらいの自信がないということなんで、まずはそっちを戒(いまし)めるべき。
 僕も昔は、すごくノーコンピッチャーだったんで、以前は、カウント0-2から良いとこ投げて、取ってくれなかったら、マジかよって思ってましたけど、ノースリーからストライク取れれば何も思わないわけで、そこは自分の実力がないからだと思うんですよね。

ミーティングの様子

――ちなみにそんな佐竹投手は、どうやってコントロールを磨いていったのですか?

佐竹 僕は、大学の時に教えてもらった理論を理解するまでに8年かかりました。
 ずっと試行錯誤してやってたんです。それで気づいたのが、メンタルも技術的なものに含まれているということ。メンタルと技術って大いに関係します。比例というかシンクロしている。
 高校の時は、ネガティブになる要素はなかったけど、大学のときは、良い球を投げてボール取られただけで、「マジかよ」って思った(笑)
 僕はそこの差だと思うんです。

 ダルビッシュ有選手(テキサス・レンジャーズ)や田中将大選手(ニューヨーク・ヤンキース)は、そこに気付いたのが早かったんじゃないかなって。高校の時点で、それくらい高い意識で野球をやってたから、あそこまで成長できた。
 もちろん身体的な違いはあるかもしれないけど、身体が大きい小さい、球が速い遅いがあるかもしれないけど、目標としているところが違い過ぎたんで、そこに早いうちに気付けるかどうか。僕はそこが全然足りていなかったんです。今の意識レベルが中学・高校の時にあれば絶対にプロにいけたなって(笑)。絶対、そこで一日の過ごし方が変わってくるので。

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3ヶ月間、死ぬ気でやれば人生は変わる!

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社会人野球から学ぼう 元鷺宮製作所 岡崎淳二さん

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――では、ベストコンディションではない時に、どう投げていますか?

佐竹 結局、それが今のベストコンディションなんですよ。『今の』って思うしかない。
 自分の身体が、今日も体調よくないなって分かっていることだけでも、良いことです。
 体調が悪いからダメじゃなくて、悪いけどやるしかない。だから、ストレッチや身体を動かして出来るところまで準備しておく。
 自分のこれだと思うことをギリギリまで準備して出来ることをやる。それでも、試合でストレートが走らないなら、その中で、どう抑えるか。
 それが、その日の100%なわけです。例え、それがいつもの70%だとしても、その中でどう抑えるか。調子が急激に上がることはないので、今のベストコンディションで、抑えることを考えてやるしかないんです。

――佐竹投手は、大舞台でも自分のピッチングが出来る投手ですが、大事な場面で力を発揮するために、大事にしていることはなんでしょうか?

佐竹 練習での取り組み方ですね。ピッチング100球って言われたら、テーマを毎回考えます。大舞台の試合だと思って、100球投げる日もあれば、今日は低めに投げようというテーマを持って投げる日もある。走るにしても、30m×20本といわれたら、こうなりたいために、こうやって走ろうとか。
 そこに向けて自分が、どこまで、やってこれたかどうか。そこを全部自分がやり切れたと思えば、大舞台でビビることはないんです。

球児へのメッセージ

全国の高校球児にエールを送る佐竹投手

――では、最後に高校球児にメッセージをお願いします!

佐竹 僕は甲子園に行けてないんですが、(新3年生の球児にとっては)甲子園って一生の中でチャンスって、あと1回しかない。人生が変わると思うんです。僕は、甲子園に出た人が今でもうらやましい。高校生たちにとって、まだ、甲子園が目指せるところに全員いるので、本気で日本一を目指してほしい。甲子園出場を目指していたら、出られない。

 あと3か月。高校生なんて、3か月死ぬ気でやれば、人生が変わる。
 あと3か月“しか”ない。本当にあっという間ですよ。応援してます!

 佐竹投手、とても参考になるお話をありがとうございました!

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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