大混乱となった大阪桐蔭vs履正社から「見逃し率」に迫る
大混乱となった大阪桐蔭対履正社
大阪桐蔭と履正社のユニフォーム
藤浪 晋太郎が大阪桐蔭2年生だった2011年7月9日、大阪桐蔭対関大北陽という優勝候補同士の一戦が1回戦で繰り広げられた。このときは大観衆を収容できる[stadium]京セラドーム大阪[/stadium]が会場だったこともあり大きな混乱にならなかったが、今年の7月19日、1万人しか収容できない[stadium]舞洲ベースボールスタジアム[/stadium]で行われた優勝候補同士の一戦、大阪桐蔭対履正社戦は大混乱に陥った。
最寄駅のJR桜島駅前にはバスを待つ長蛇の列が出来上がり、私が球場に着いたのは予定していた14時を大幅に超過する15時半頃。[stadium]舞洲ベースボールスタジアム[/stadium]に着くと予想通りチケット売り場まで長蛇の列ができ、外からバックネット裏のスタンドを仰ぎ見ると立ち見客でいっぱいだった。スタンドは文字通り立錐の余地もなく、1万人しか収容できない同スタジアムに1万3000人を押し込んだため、スタンドで観戦する予定だった大阪桐蔭のOB、中村 剛也(2015年インタビュー 春・夏)、浅村 栄斗(2013年インタビュー・2014年インタビュー・2015年インタビュー)(ともに西武)、藤浪(阪神)、森 友哉(2014年インタビュー)(西武)は、記者席隣の部屋での観戦を余儀なくされた。
この大混乱は、全国で大阪だけが行っているノーシード制によって引き起こされたと言っていい。ベスト8以降の対戦ならば、これほどの過熱状態にはならなかったはずだ。ノーシード制による初戦の対決だったため、これを見逃せばこの夏はもう見られなくなるかもしれないという強迫観念が手伝って大観衆が押し寄せてしまった。
履正社・岡田 龍生監督は「こんなに人が入ったのは初めて見た」と笑っていたが、この頂上決戦が第3試合目に組まれたため、試合終了後は舞洲一帯が大渋滞になり、帰りのバスにもタクシーにも乗れない非常事態が発生した。
さて、肝心の試合だが、これが一帯の交通事情同様、熱気がこもっていた。履正社が2回に1点を先制すれば大阪桐蔭が3回に2点取って逆転するという展開。2対1のスコアを「熱気がこもっていた」と表現するのは気が引けるが、履正社が5回までに敢行した初球打ちは8人と多い。これを試合後、岡田監督に指摘すると「初球から行けと指示した」と明言し、その理由をさらに聞くと「(初球打ちは)確率が高いから」と言う。
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1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
大阪桐蔭 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 2 | 5 |
履正社 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
大阪桐蔭:田中-谷口
履正社:寺島-塚畝
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好球必打の姿勢を示す「見逃し率」
好球必打を重要視する西谷監督(大阪桐蔭)
これほど初球打ちを敢行しても、見逃しの数は履正社より大阪桐蔭の方が少なかった。私は昨年から「見逃しの少ないチームの方が勝率は高いのではないか」と思い、今年の5月から一球一球のスコアをつけるようになり、毎試合ごとの見逃し率をノートにつけている。
見逃し率、つまり全投球に占めるストライクの見逃しの割合は、数値が低い方が好球必打の傾向が強い。そしてこの原稿を書いている8月4日現在、確認できた73試合のうち見逃し率が少ないチームの勝率は.630と圧倒的である。
しかし、勝利チームの見逃し率1ケタ台はこれまで5月5日の亜細亜大(8.3%)、7月22日のトヨタ自動車(7.5%)の2チームだけ。1ケタ台でなくても15%以内ならチームを挙げて好球必打に取り組んでいると言っていい。逆に20%以上は待球を選手に指示している気配が感じられる。ノーマル帯は16~19%の間である。
話を大阪桐蔭対履正社に戻すと、5回まで8人が初球打ちを敢行した履正社の見逃し率は最終的に16.5%に落ち着き、大阪桐蔭は12.3%と好球必打を最後まで実践し続けた。
試合後、西谷 浩一・大阪桐蔭監督に見逃し率の話を振ると、「少なかったでしょう」としっかり自覚していた。もともと私がこんなことを考えるきっかけは西谷監督の早打ちに関するインタビューでの発言なので、当然といえば当然である。「(履正社の2年生左腕)寺島 成輝がよかったので、それ(好球必打)しかないでしょ」と笑って引き揚げて行った。
大阪桐蔭の16個の見逃しのうち、キャプテンの福田 光輝が3個と一番多かった。選抜の序盤で3番をまかされていた選手がこの日は7番。見逃し率は選手の好不調を現すバロメータと言っていいだろう。
(文=小関 順二)
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