BASEBALL FAN

◇5月13日(日曜日)晴れ
東京六大学リーグ/神宮球場
早稲田大14-2法政大

 まず目についたのは、法大のスターティングメンバー。私が見た5/6からこの日までのスタメンの変遷を紹介する。

5/6(明大戦) 5/7(明大戦)5/12(早大戦)5/13(早大戦)
(9)建部賢登 (9)建部賢登 (9)建部賢登 (6)多木裕史
(7)岩澤寿和 (7)岩澤寿和 (8)伊藤慎悟 (9)建部賢登
(4)高木悠貴 (4)高木悠貴 (7)岩澤寿和 (7)岩澤寿和
(6)多木裕史 (5)西浦直亨 (6)多木裕史 (3)伊藤諒介
(5)西浦直亨 (3)伊藤諒介 (5)西浦直亨 (2)土井翔平
(3)伊藤諒介 (6)多木裕史 (4)高木悠貴 (4)高木悠貴
(2)土井翔平 (2)土井翔平 (2)土井翔平 (5)西浦直亨
(8)伊藤慎悟 (8)伊藤慎悟 (1)三嶋一輝 (8)伊藤慎悟
(1)石田健大 (1)三嶋一輝 (3)大城戸匠理(1)石田健大

 4試合のうち、同じスターティングメンバーだった試合が1つもない。5/7の多木の6番は前日の3打数0安打が降格理由だろう。伊藤諒介の5番昇格は前日4打数2安打3打点、5/12の岩澤の3番昇格は5/7の6打数2安打、打点1……という具合に、いずれも前日(前週)の成績と密接に関連している。言ってみれば「信償必罰」の法則がある。
 これを徹底すると選手が結果にこだわるようになり、打者は強くバットを振ることができなくなる。とくにその傾向が顕著なのが多木で、上記4試合の打撃結果は次の通り。
 5/ 6(明大戦)……[1]二ゴロ[2]空振り三振[3]遊飛[4]死球
 5/ 7(明大戦)……[1]一ゴロ[2]空振り三振[3]死球[4]中犠飛[5]二ゴロ
 5/12(早大戦)……[1]二飛[2]投ゴロ[3]右飛[4]三飛
 5/13(早大戦)……[1]空振り三振[2]二ゴロ
 すべて凡打には目を瞑って内容に注目すると、内野ゴロが5、内野フライが3と、当てにいった様子がよく見える。とくに左打者の遊飛、三飛は評価できない。ショートの頭を越すヒットを打ちたいという、腰が引けた考え方が垣間見えるからだ。多木にはもっとのびのびとバットを振ってもらいたい。
 大差で勝利した早大には好材料がたくさんあった。投手では先発した吉永健太朗(1年・右投右打・182/80)、リリーフした有原航平(2年・右投右打・187/93)が見事なピッチングを展開し、野手では6番を打つ茂木栄五郎(1年・三塁手・右投左打・171/75)をはじめ、ともに4、5番を打つ4年生の杉山翔大(一塁手・右投右打・172/78)、地引雄貴(捕手・右投右打・183/75)がよかった。
 有原はダルビッシュ2世の呼び声こそかからないが、数多出現したダルビッシュ2世とくらべても本家本元に最も似ていると思うし、吉永はコントロールと変化球の精度は言うことなしで、ストレートの球速にもう少しこだわりを持ってもらいたいと思った。まあ、これは粗探しである。野手の3人については、いつかどこかで書くことにする。とにかく3人ともよかった。

[註]5/2の西武対楽天、5/11のロッテ対ソフトバンクの観戦記は<ホームページ>に掲載。http://kosekijunjihomepage.com/

 5月9日に行われた東都大学リーグ、東洋大対亜細亜大、日本大対青山学院大を見て思ったのは、やっぱり東都の全力疾走はすごいな、ということ。前で、明治大と法政大の全力疾走を誉めたが、「(打者走者の)一塁到達4.3秒未満、二塁到達8.3秒未満、三塁到達12.3秒未満」という全力疾走の基準タイムの回数ではなく、タイムそのものをくらべると、東都各校の走りの迫力に目を奪われる。
 一塁到達3秒台、二塁到達7秒台、三塁到達11秒台とハードルを上げて、タイムクリア選手を比較してみよう。(*印はバント)

◇5/7 明大対法大
一塁到達……高山俊3.92秒(明大1年)
二塁到達……0人
三塁到達……石川駿11.96秒(明大4年)
◇5/7 東洋大対亜大
一塁到達……*中村毅3.76秒(亜大3年)、坂本一将3.92秒(東洋大4年)
二塁到達……藤岡裕大7.50秒(亜大1年)、藤井史弥7.88秒(東洋大4年)
三塁到達……中村篤人11.77秒(亜大3年)
◇5/7 日大対青学大
一塁到達……*山口篤史3.80秒(日大4年)、*小林論尚3.95秒(青学大2年)、谷康士朗3.99秒(日大2年)
二塁到達……0人
三塁到達……井上彰吾11.27秒(日大4年)

 東都各校の走りの迫力は社会人野球に受け継がれている。社会人野球を見れば、社会人各チームのレギュラーに東都出身者が多いことに驚かれると思う。この走りはのちにプロ野球に伝播し、日本代表のWBC連覇によって今、世界にも伝わろうとしている。
 平日開催のため仕事をされている方は東都大学のリーグ戦を見ることは難しいと思うが、一度見てほしいと思う。世界の潮流になろうとしている全力疾走の源流は、この東都大学リーグの日々の戦いにあるのである。

[註]5/9の東洋大対亜細亜大の観戦記は<ホームページ>に掲載しています。

http://kosekijunjihomepage.com/

 昨日、本ブログに「東京六大学リーグは走らない」と書いたことに発奮したわけでもないだろうが、5/7の明大、法大両校はよく走った。打者走者の全力疾走の基準「一塁到達4.3秒未満、二塁到達8.3秒未満、三塁到達12.3秒未満」をクリアしたのは法大4人(5回)、明大5人(7回)。私が見た東京六大学の試合ではこの春、最高に走った試合である。クリアしたのは次の選手たちだ。 ※以下の[ ]内数字は打席数。

■法大
◇建部賢登(4年・右翼手・右投左打・172/71)
[5]二塁ゴロ4.06秒
◇岩澤寿和(4年・左翼手・右投右打・181/80)
[3]三塁ゴロ4.28秒
◇伊藤諒介(2年・一塁手・右投左打・172/78)
[1]一塁ゴロ4.29秒[2]三塁打12.08秒
◇多木裕史(4年・遊撃手・右投左打・178/74)
[5]二塁ゴロ4.25秒
■明大
◇川嶋克弥(4年・左翼手・右投左打・173/74)
[5]二塁ゴロ4.19秒
◇上本崇司(4年・遊撃手・右投右打・170/70)
[5]右前打4.26秒
◇高山 俊(1年・中堅手・右投左打・181/84)
[1]中前打4.23秒[2]一塁ゴロ4.08秒[6]三塁ゴロ3.92秒
◇石川 駿(4年・三塁手・右投右打・178/80)
[3]三塁打11.96秒
◇福田周平(2年・二塁手・右投左打・170/65)
[5]中前打4.28秒

 東都勢に負けていないどころか、迫力では上回っている。流して走りがちな単打のときの一塁到達で明大の上本、高山、福田が見事にタイムクリアしているのだ。意識の高さとともに、一塁ベースへ向かうとき、過剰に膨らまない走塁がこれらのタイムに結びついている。
 観戦記は<小関順二の公式ホームページ>に掲載するが、試合の展開は引き分けに終わった昨日とそっくりで、これはひょっとして昨日の試合なのでは、と既視感に襲われた。

     早 大 法 大 慶 大 明 大 立 大 東 大 勝  敗 勝点
 早 大  *              ○○   ○○ 4勝0敗  2
 法 大      *  △○○ ●△○  ○○      5勝1敗  2
 慶 大     △●●  *  ○○       ○○ 4勝2敗  2
 明 大     ○△● ●●   *       ○○   3勝3敗  1
 立 大 ●●   ●●           *       0勝4敗  0
 東 大 ●●      ●●   ●●       *   0勝6敗  0

 明大は残り試合すべてに勝てば優勝する可能性を残し、法大は早大とともに優勝争いのトップに立っている。早大が強豪、法・明・慶との戦いを残しているので、明大戦で勝ち点を奪えば、それは優勝争いの先頭に立つことを意味する。頑張らないわけがない。
 全力疾走の反対、アンチ全力疾走の基準を私は「一塁到達5秒以上、二塁到達9秒以上、三塁到達13秒以上」に置いているが、この試合でアンチクリアは0人。いかに本気で戦ったかよくわかる。やればできるじゃないか、と思った。

 東京六大学リーグと東都大学リーグは大学球界を二分する中心勢力だが、「打者走者の走塁」という部分に目を向けると、東都に軍配が上がる。六大学も昨年までは慶大を中心に各校が全力疾走に取り組んでいたが、この春はどうも精彩がない。
 打者走者の全力疾走の基準「一塁到達4.3秒未満、二塁到達8.3秒未満、三塁到達12.3秒未満」を1試合何人が計測したのか、この春に見た中から紹介しよう。

◇4/10(火)青山学院大4人/6回、駒沢大5人/7回(駒大5-2青学大)
       日本大2人/2回、中央大5人/9回(中大8-4日大)
◇4/15(日)法政大2人/2回、慶大4人/4回(法大1-1慶大)
       明治大4人5回/東京大4人/4回(明大11-0東大)
◇4/18(水)亜細亜大4人/6回、日本大2人/3回(亜大6―0日大)
       青山学院大3人/4回、東洋大2人/2回(東洋大7-3青学大)
◇4/20(金)亜細亜大3人/5回、日本大3人/5回(亜大2-1日大)
       青山学院大5人/5回、東洋大5人6回(東洋大3-2青学大)
◇4/21(土)法政大5人/8回、立教大1人1回(法大2-1立大)
       ※早稲田大2人/2回、東京大1人/1回(早大13-0東大)
       (6回表から計測)
◇4/29(日)※明治大1人/2回、慶応大1人/1回(慶大8-2明大)
       (5回表から計測)
◇5/1(火)日本大5人/8回、駒沢大5人/6回(駒大3-2日大)
      ※青山学院大2人/2回、中央大4人/6回(青学大8-7中大)
      (4回表から計測)
◇5/6(日)東京大1人/1回、慶応大2人/3回(慶大11-2東大)
      明大2人/3回、法大2人/4回(明大4-4法大)

 一目瞭然、東都のほうが走っている。元々、全力疾走は東都の十八番で、六大学が追走する形でここ数年拮抗してきた。しかし、打者走者が走ることに価値を見出さなくなったのか、この春、突然ブレーキがかかった。ただでさえ、東大戦というブレーキがかかりやすい要因を抱えているのに、法明戦という実力校同士の試合(5/6)でも2人ずつしか、全力疾走していないのである。あとは推して知るべしである。
 打者走者の全力疾走がどれだけ有効か、上記表の勝敗と全力疾走の人数を見くらべて皆さんで判断していただきたい。

[註]4/30春日部共栄対狭山ヶ丘、5/4千葉英和対千葉国際、5/6法大対明大の観戦記は,<小関順二公式ホームページ>に掲載。http://kosekijunjihomepage.com/

 昨年の7月14日に行われた千葉大会2回戦で千葉国際のエース・相内誠(右投右打・182/70)は土気打線を1失点、9奪三振で退けている。このときの投球をHP(「小関順二公式ホームページ」http://kosekijunjihomepage.com/ )に次のように書いた。断片的に紹介しよう。

「バックスイングに入りながら上体にねじれが加わるので、どうしても左肩が早く開く」
「似たタイプは岩隈久志(楽天)。トップに向かうとき、ボールを持つ右手がグラブから離れるところ、さらに内側から絞り上げるようなテークバックもよく似ている」
「奪った三振は9個。勝負球の内訳はストレートが6個、カーブが2個(1個は不明)と、ストレートのよさと変化球の物足りなさをよく表している」

 このときの印象ががらりと変わった。まず似ている投手は岩隈久志(マリナーズ)ではなく、全盛期の新垣渚(ソフトバンク)。さらに変化球はカーブ一辺倒ではなく、キレ味鋭いカーブ、スライダー、フォークボールを備えている。約10カ月でこれほどの変身を遂げている。見事と言うほかない。
 詳しくはホームページの観戦記に書くが、これほどの投手は関東でもそれほどいないと思う。私の知り得る限りでは川口貴都(国学院久我山)、鈴木誠也(二松学舎大付)、池田隆英(創価)、中村祐太(関東一2年)、柳裕也(横浜)に匹敵し、将来性はナンバーワンだと思う。勝ち残っているので、興味のある方は是非見てほしい。