BASEBALL FAN

 今年度版の『プロ野球 問題だらけの12球団』(草思社)が3/17(月)に発売されます。2000年にスタートして今年でシリーズ15冊目になります。よくここまで続いたと思うし、読者の方々の支援がなければとてもここまで続かなかったと、感謝の気持ちでいっぱいです。今年度版は昨年より32頁増え240頁でお送りしていますが、定価は1500円+税のままです。増えた分、冒頭に特集頁を設け、田中将大のメジャー移籍、落合博満・中日GMの年俸カット、理想的なチーム作りのためのドラフト戦略について書きました。また巻末では13年度のアマチュア、プロ野球選手の各塁到達タイムを紹介しています。

 京都純典氏の企画・監修による『プロ野球本当の実力がわかる本』(日刊スポーツ出版社)が出版されました。副題に「セイバーメトリクスで見るプロ野球」とあるように、打者の指標=OPS(出塁率+長打率)、BB/K(四球数÷三振数)、投手の指標=QS(クオリティスタート→先発投手が6回以上を自責点3に抑えた回数を%で表す)などで12球団の選手を紹介した本です。同書を参考に、二軍戦でセイバーメトリクスの数値が高い若手選手を調べてみました。

◇出塁率(100打数以上)
近藤健介(日本ハム200打数) .429→OPS.944
宮崎祐樹(オリックス105打数).407→OPS.864
伏見寅威(オリックス115打数).405→OPS.805
坂口真規(巨人322打数)   .403→OPS.829
◇長打率
近藤健介(日本ハム200打数)   .515→OPS.944
猪本健太郎(ソフトバンク204打数).515→OPS.831
會澤 翼(広島127打数)     .512→OPS.853
宮崎敏郎(DeNA236打数)    .492→OPS.889
森田一成(阪神308打数)     .484→OPS.862
中井大介(巨人139打数)     .482→OPS.861
中川大志(楽天380打数)     .479→OPS.836
大田泰示(巨人257打数)     .479→OPS.811
加藤翔平(ロッテ398打数)    .470→OPS.847
橋本 到(巨人303打数)     .465→OPS.855
石川慎吾(日本ハム425打数)   .464→OPS.804
李 杜軒(ソフトバンク108打数) .463→OPS.858

 これらの数値を見て私なりに期待するのは近藤健介(日本ハム)、坂口真規(巨人)、中川大志(楽天)、石川慎吾(日本ハム)あたりでしょうか。近藤は鶴岡慎也がソフトバンクへ移籍して第2捕手としての一軍ベンチ入りのみならず将来の正捕手の座が見えてきました。坂口はポスト村田修一、中川大志は長打不足のチーム事情が追い風になりそうだし、石川はポスト陽岱鋼に名乗りを挙げる勢いです。
 台湾では陽のメジャー挑戦が話題になっているらしいですが、日本ハムフロントもそのための準備は出来上がっているような気がします。

 2014年度の野球殿堂入りが1/17発表されました。競技者表彰は野茂英雄、秋山幸二、佐々木主浩、特別表彰は相田暢一の計4人です。相田は1943(昭和18)年の学徒出陣壮行試合、いわゆる最後の早慶戦が行われたときの早稲田大学のマネージャー。自由にプレーできるようになったときのためにボール300ダース、バット300本、ノックバット十数本を購入・保管、これらを戦後他大学に分配し、野球復興に貢献しています。殿堂入りは当然です。
 相田の表彰で東京六大学リーグ出身者の野球殿堂入りは計107名。その伝統を考えれば文句のない数字ですが、大学球界の一方の雄、東都大学リーグの殿堂入りは古葉竹識(専修大学・99年)、田宮謙次郎(日本大学中退・02年)、川島廣守(中央大学・06年)、大本修(芝浦工大・12年)の4人しかいません。近年の全国大会での活躍を考えれば少なすぎる人数です。

◇宮井勝成(中央大学)…早稲田実の監督時代、王貞治投手を擁し57年の選抜大会優勝。のちに中央大監督に就任、4度全国大会優勝に導く。
◇太田誠(駒沢大学)…71年春から駒沢大の監督に就任、05年に引退するまで1部リーグで前人未到の501勝を挙げる。全国大会優勝9度。
◇宮田征典(日本大学)…巨人V9元年の65(昭和40)年、救援専門でありながら20勝を挙げリリーフ投手の重要性を認識させる。“8時半の男”の異名で呼ばれる。
◇石毛宏典(駒沢大学)…81~94年までの14年間、西武のリーグ優勝11回、日本一8回に貢献。引退後、独立リーグの先駆けとなる四国アイランドリーグを創設。

 以上の東都OBは殿堂入りしてもおかしくない実績を持っています。是非ご一考いただきたい。
 高校野球に貢献した人物の殿堂入りも少ないと思います。蔦文也(元池田高校監督)、尾藤公(元箕島高校監督)、中村順司(元PL学園監督)などは殿堂入りして当然の人物だと思います。他にも次の人物が殿堂入りに相応しいと考えました。

◇宇佐美徹也…報知新聞記録記者として長く活躍。『プロ野球記録大鑑』(講談社)など著書多数。「記録の神様」の異名を持つ。
◇伊東一雄…パ・リーグ広報部長として、長くドラフト会議の司会を務める。強面のイメージのあるドラフトを野球ファンに近づけるユーモア溢れる進行ぶりで人気を集める。異名は“パンチョ”。
◇宇高勲…戦後、職業野球連盟(現NPB)に対抗して国民リーグを立ち上げ、宇高レッドソックスのオーナーに就任する。事業をたたんだあと西鉄スカウトとして東奔西走、大下弘の引き抜き、豊田泰光、高倉照幸、稲尾和久らをスカウティングするなど辣腕ぶりを発揮。
◇大塚幸之助…国民リーグ、大塚アスレチックスのオーナー。のちに職業野球連盟・金星のオーナーになり同球団を大映に売却後は大映の球団社長、東京スタジアム副社長などを務める。事業のすべてを職業野球に捧げた人生。
◇大和球士……スポーツライター。『プロ野球三国志』『真説 日本野球史』など明治以降の野球群像を活き活きと描く。とくに昭和9年以降のプロ野球は抜群に面白い。

 こういう人たちが野球界にいたということをファンに知らしめるだけでも貴重。重ねてご一考いただきたい。

 今オフ、最も動きが目立ったのはFA権取得者の大竹寛(広島)、片岡治大(西武)、自由契約となった井端弘和(中日)を獲得した巨人でしょう。大竹は先発要員、片岡はここ数年レギュラーが定着していない二塁手、井端はその二塁をはじめ本職の遊撃とその隣の三塁までカバーするユーティリティプレーヤーとしての働きが期待されています。
 獲られた側もレギュラー構成や投手構成の変更を強いられます。そういう意味では片岡、涌井秀章(ロッテ)が抜け、人的補償で脇谷亮太、中郷大樹を獲得した西武が巨人と並んで動きが目立ったチームと言っていいでしょう。
 伊原春樹新監督は新年早々、2014年度の開幕オーダーを発表しました。投手=岸孝之、捕手=炭谷銀仁朗、一塁=中村剛也、二塁=浅村栄斗、三塁=ランサム、遊撃=金子侑司、左翼=栗山巧、中堅=秋山翔吾、右翼=熊代聖人(斉藤彰吾、木村文紀)、指名代打=坂田遼という顔ぶれです。
 伊原監督は昨シーズン中、たびたび西武戦を観ているので思いつきでこのオーダーを発表したのではないと思いますが、浅村、金子の守備力で二遊間を守れるのかというのが懸念材料。私が考えたオーダーは次のようなもの。
 投手陣では中郷の加入が大きいと思います。新人の豊田拓矢、新外国人のボウデン、レイノルズも加わり安定感は昨年と同レベル(チーム防御率3.54はリーグ3位)。野手はそろそろ次代の顔ぶれを考えないといけない時期にきています。

  [スタメン]    [控え]
(2) 炭谷銀仁朗  星  孝典
          *上本 達之
(3) 浅村 栄斗
(4)+金子 侑司  脇谷 亮太
(5) ランサム   渡辺 直人
(6)*鬼崎 裕司 *永江 恭平
(7)*栗山  巧 *大崎雄太朗
(8)*秋山 翔吾  熊代 聖人
(9)*坂田  遼  斉藤 彰吾
(D) 中村 剛也  木村 文紀

 [先発]   [中継ぎ]  [抑え]  [その他]
 岸  孝之 *高橋 朋己  ボウデン  *川崎 雄介
*菊池 雄星  増田 達至         西口 文也
 十亀  剣  豊田 拓矢        *小石 博孝
 レイノルズ  大石 達也         岡本 篤史
 牧田 和久  中郷 大樹         岡本 洋介
 野上 亮磨 *ウィリアムス

 阪神がFA移籍した久保康友の人的補償で鶴岡一成(DeNA・今季37歳)を獲得すると報道されています。もし本当なら、来季の阪神には藤井彰人(近鉄→楽天→11年)、日高剛(オリックス→13年)に続いて3人目の他球団を経由した捕手が揃うことになります(日本ハムから移籍した今成が昨季捕手として3試合に出場している)。
 87~02年の暗黒時代(16年間でAクラスがわずか1回)を脱した原動力が金本知憲や矢野耀大などFA・トレードで獲得した他球団の主力選手だったため、中村勝広GMなどフロント上層部には育成よりトレードのほうが有効だという刷り込みがあるようですが、かつては同じ路線を突っ走った巨人は育成と補強の二本柱に切り替え強さを取り戻し、阪神で補強作戦の陣頭指揮を執った星野仙一は昨年、楽天監督としてやはり補強と育成の両面作戦が功を奏し日本一に輝いています。阪神フロントはいい加減、目を覚ましたほうがいいと思います。
 なお、2リーグ並立後の64年間(1950~2013年)、セ・パ両リーグで優勝した128チームのうち、トレード経験のある捕手で勝ったチームは次の15例しかありません。

<セ・リーグ>
 1951年/巨人 楠協郎(巨人→阪急→西鉄→巨人)
 1954年/中日 野口明(セネタース→大洋・西鉄→阪急→中日・名古屋)
 1989年/巨人 中尾孝義(中日→巨人)
 2003年/阪神 矢野耀大(中日→阪神)
 2004年/中日 谷繁元信(横浜→中日)
 2005年/阪神 矢野耀大(中日→阪神)
 2006年/中日 谷繁元信(横浜→中日)
*2007年/中日 谷繁元信(横浜→中日)※CS勝ち上がり日本シリーズ制覇
 2010年/中日 谷繁元信(横浜→中日)
 2011年/中日 谷繁元信(横浜→中日)
<パ・リーグ>
 1950年/毎日 土井垣武(阪神→毎日)
 1954年/西鉄 日比野武(阪急→西日本→西鉄)
 1960年/大毎 谷本稔(大映→大毎)
 1974年/ロッテ 村上公康(西鉄→ロッテ)
 2011年/ソフトバンク 細川亨(西武→ソフトバンク)

 捕手は生え抜きのほうがチームは強くなる、そういう結論が出ているように私には思えるのですが、どうでしょう。