この秋、関西の野球界を揺るがしたのは佛教大のエース・大野雄大である。MAX151㌔のストレートを武器に、関西選手権で立命館大を力でねじふせ、ドラフト上位候補として、関西圏内にその名を轟かせた。
そして、彼は、続く神宮大会でも、そのストレートを武器に、全国に、その名を売った。「昨年の藤原(立命館大)より、面白い存在」と話す人は、そう少なくない。
その大野の秋が、きょう、終わった。準決勝戦で、立正大に敗れ、悲願はならなかった。
大野についてはご記憶の方もおられるかと思うけど、京都外大西の出身。センバツで投げたのを僕も覚えている。ストレートを軸に、スライダー、カーブを投げ分ける本格派左腕だったというのを記憶していた。
大学に入ってからも、彼については、1年秋前の練習試合と、昨年の神宮大会でちらっと見たが、上半身主導のフォームで豪華に投げ込む左腕という印象で、大味な選手という評価をしていた。
まぁ、この秋も、そういう投手に変わりはなかったのだけれど、実際は違っていたらしい。本人に聞いても、「もっと変化球を投げていた」というし、高校時代の恩師・上羽監督も「変化球でストライクを取れるはず」と語っていたほどだから。
いわば、大野は、この秋、特にリーグ戦を制してから、奈良産業大、立命館大、九州産業大、きょうの立正大に対し、ストレートだけで挑んでいたということである。
勝利のことだけを考えれば、これほ無謀なことはない。
しかし、僕は、そんな彼を評価したい。
というのも、まだ3回生である彼が、スライダーに頼った。交わすピッチングをして勝ったとしても、なんら意味をなさないと思うからだ。彼自身が得意とするストレートがどれだけ通用するか、それを確認する必要があった。
「ストレートだけじゃダメやということが分かったし、ストレートに関しても、コントロールとか、磨いていかないといけないことがある」とは、きょうの試合後の大野である。
これが、例えば、変化球に頼ったピッチングをしていれば導きだっせなかった課題だったのではないだろうかと僕は思うのだ。
阪神2軍の蕭一傑とも話をするのだけれど、格上じゃないと判断できる相手に対して、変化球で抑えることになんの意味もないということだ。たとえば、二軍の選手で変化球を狙う選手はいるか?答えはNOである。ストレートを狙ってくる相手に対し、ストレートで抑えることができれば、それだけのストレートだということである。
ある指導者がこんな話をしてくれたことがある。
「並の投手は内に速く、外に緩くや。でも、上で勝負したかったら、アウトローのストレートで勝負できるかやろう。アウトローは、技術も体力もいるなかで、それをどれだけ追及していけるかやろう」。
ヤクルトで、この秋季キャンプから1軍に召集された山田弘喜の例をとってもそうだ。彼は9月の最終登板の試合でホームランを打たれた。その時の配球が実におもしろかったのだ。
2-3から、4番・鵜久森を迎えた場面で、山田は2回首を振った後、ストレートを投げて、本塁打を叩きこまれたのだが、その時の山田の話が面白かった。
「スライダーが投げたくて、首を振ったけど、キャッチャーのサインがストレートだった。八木沢コーチが言うには、カウントが悪い状態で、相手が主軸の中でストレートを投げるのはご法度、と。でも、バッテリーコーチが言うには、ストレートで勝負しなアカン、なんです」
山田弘喜の持ち味は、強いメンタルはもちろんのこと、コントロールと高速スライダーである。しかし、それを生かすためにはストレートが大事。その中で、2軍相手にスライダーで交わしていたのでは、上では通用しないということである。
大野はそれをこの秋、やり抜いてきたのだ。ストレートで行ききってどこまでいけるのか。きょうの試合では変化球は10球程度しか投げなかったし、前回は10球も投げていない。立命戦でも8球程度だ。自分の今の実力をどれだけ試せたことだろう。
僕は、そんな彼に、将来を見るのだ。
「もうひと周り、成長して、神宮に帰ってきます」
と大野は別れ際に語ってくれた。
大野にとって、この秋が、野球人生を左右する大事な「秋」になったに違いはないだろう。
来年が楽しみだ。