笹永 弥則選手 (宇部鴻城)

寸評

　山口県内では下級生の時から注目されていた左腕投手で、ようやく最後の夏で全国の舞台に足を踏む事が出来た。左サイドから投げる変則投手で、横の角度を活かした速球・スライダーで勝負する。 （投球内容） 　左サイドから投じる速球は常時130キロ前後（最速134キロ）。横の角度で勝負する投手で、対角線上に決まった時のストレートが彼の武器。綺麗なストレートではなく、微妙に動かして芯を外す。 　ただ前半はそのストレートが高めに抜けており、しっかりと踏み込んで打たれている。4失点をされてからは右打者にはインのストレート、カーブを使い分けてから凡打を量産。左打者には外角中心に厳しく直球、変化球を織り交ぜ、彼本来の持ち味であるコーナーワークを存分に活かした投球が出来ていた。 　変化球は110キロ前後のスライダー、90キロ前後のカーブ。曲がりの大きいスライダー、カーブを投げ分け、高めのストレートをより速く見せて空振りを奪っている。やや制球が不安定だが、打者の揺さぶりは巧い投手だ。 　クイックは1.1秒～1.2秒前後の素早いクイックが出来ており、牽制も鋭く、フィールディングの動きも素早く、投球以外の技術はしっかりと押さえられている。 （投球フォーム） 　ワインドアップから始動。右足を頭上の近くまで引きあげて左足の膝を適度に曲げてバランス良く立つ事が出来ている。右足を一塁方向へ沈めていきながら、重心を少しずつ下げてインステップ気味に着地する。 　右腕のグラブを斜めに伸ばして開きを抑えていくが、グラブがしっかりと畳む事が出来ず、ややグラブが遊びがち。テークバックではしっかりと肘が上がっており、そのまま回旋していけば、切れのあるストレートを投げられるのに、打ち難さを意識しているのか、腕を下げて肘が立たない状態でリリースしているため、自分のリリースポイントで離す事が出来ず、上手く制御出来ない。 　物足りなさを感じるのはやはりフォームから。肘が立たず、窮屈なリリースポイントで投じているフォームを見ると、自分の持っている力を発揮出来ないのではないだろうか。もっと素直にリリースの際に肘の位置を上げていったほうがスムーズに腕を振る事が出来ると考える。

将来の可能性

　投球が出来る左腕で、大学でも投球術の巧さで頭角を現すタイプになりそうだが、上のステージの打者にも抑え込めるストレートのスピード、球威、キレを求めていきたい。そのためにはロックがかかって上半身の回転でとどまっているインステップを矯正し、体全体で回転し、勢いを与えられる投げ方にしていきたい。 　大学で頭角を現した時は驚くような成長を見せているかもしれない。