前田 知輝選手 (遠軽)

寸評

　昨夏見た遠軽高校の試合では、打者　前田知輝　しか確認できなかった。しかしこのセンバツでは、エースナンバーを背負って甲子園に乗り込んでくる。一体投手　前田 知輝　は、どんなピッチングを魅せてくれるのか大変楽しみであった。そんな期待に応えてくれたかのように、見事センバツ初戦のいわき海星戦(2013年03月23日)では、3安打完封で全国デビューを果たす。 （第一印象） 　小太りの体型ながら、投打にパワフルな印象を受けます。また投球テンポが異常にハイテンポで、相手に考える時間を与えません。 （投球内容） 　ノーワインドアップから、120キロ台後半～130キロ台中盤と思ったほどの球速は出ませんでした。しかしその球速以上に感じさせる球威・球速はあり、高めに浮くことの多い球筋もかえって有効に作用するボールの勢いがあります。変化球は、スライダー・チェンジアップ、それにツーシーム系の球も意図的に投げているように思います。投球は粗っぽく見えますが、ボールは適度に両サイドに散り、荒れ球なのがかえって的を絞り難くして試合を作ります。 ＜長所＞ 　腕が強く振れるのが、彼の最大の魅力。また一見上半身に頼ったフォームに見えますが、結構下半身が使えており、ボールに上手く体重も乗せられています。その辺が、ボールに球威と勢いを与えている要因だと考えられます。 ＜課題＞ 　テイクバックを大きく取り過ぎているせいか、体の「開き」が早く、ボールが見やすいのが気になります。それでも荒れ球が、打者の予測をつき難いものにしているのかもしれません。 　抱えていたグラブも最後解けてしまいますし、足の甲での地面の押し付けも遅く、上体が浮きがちで低めに押し込めません。もう少し早く重心が沈み込んで来ると、ボールの上吊りやアバウトな制球も改善されるのではないのでしょうか。

将来の可能性

　球足の速い強打も魅力なのですが、守備・走塁に光るものがなさそうなので、このまま将来的にも投手かもしれません。体に力があるので、まだまだボールは速くなるかもしれません。ただもう少し角がとれて来ないと、上のレベルでは苦労するのではないのでしょうか。夏の甲子園を目指すには、勢いだけでなく技術など、もう一歩深く野球に向き合う姿勢が求められます。ただ大胆にゆく時とそうでないところのメリハリは意外にできそうなので、そういった意味では意識や指導次第ではまだまだ伸びるのではないのでしょうか。