柏尾 篤哉選手 (市立呉)

寸評

　1年夏から、チームのエースとして活躍している投手です。秋季大会では、すでにMAX141キロまで記録したのだとか。2012年度の広島球界を代表する投手として、今後の活躍が期待される一人です。 （投球内容） 　足の横幅を広くとって構え、ノーワインドアップから投げ込んできます。地面をポンと踏んで、勢いよく足を引き上げて来る躍動感とテンポの好い投球が持ち味です。 　夏の広島新庄戦の模様を観た限り、球速は常時130キロ前後ぐらいかなと思えました。勿論この試合は夏の連戦での投球だったので、元来もっと球威・球速があるのでしょう。それでもストレートには力があり、けして3年生と比べても見劣る球ではありませんでした。変化球は、曲がりながら落ちるスライダーを中心に、カーブやシンカー系の何やら落ちる球もあるように思えます。 　フィールディングや牽制は平均的で、クィックも1.1～1.2秒ぐらいと基準レベル。特に「間」を意識した投球や、微妙な投球の駆け引きで勝負するようなピッチングセンスは感じません。あくまでも軽快なリズムで、ポンポンと投げ込んでくるのが持ち味です。 （投球フォーム） ＜広がる可能性＞ 　引き上げた足を地面に向けて伸ばすフォームなので、見分けの難しい腕の振りでカーブを投げたり、縦に鋭く落ちるフォークのような球を使いこなすのは厳しいと思います。ただ着地までの時間は稼げているので、それ以外の球種を増やすことは可能性であり、将来的にはまだまだ投球の幅を広げて行くことが期待されます。 ＜ボールの支配＞ 　グラブを最後まで内に抱えられ、両サイドへも大まかに投げ分けられています。時々スライダーが甘く入る時がありますが、これは指先の問題だと思います。足の甲での押しつけも深いのですが、膝小僧まで土が着いてしまうほど重心が沈んでおり、スパイクのエッジを活かせず、低めに集める効果はそれほど期待できません。しかしストレートは、あまり浮くことがないのは確かです。ボールも前で離せる「球持ち」の良さがあり、将来的にはきめ細やかな制球を身につけられる可能性があると考えられます。 ＜故障のリスク＞ 　お尻が落とせない割に、カーブやフォーク、あるいはシュート系を多投することもないので、肘への負担などは考えにくいです。ただ躍動感を生かした力投型なので、疲労を貯めこみやすい投球なので、故障への可能性は否定できません。大きくテイクバックを取ったときに、肘は前の肩と後ろの肩を結ぶラインより下がっていて、リリースの際に結構角度をつけて投げいることからも、肩への負担は少なくないはず。故障には充分注意して、日頃のケアに努めて欲しいと思います。 ＜実戦的な術＞ 　着地までの「間」は悪く有りませんが、体の「開き」は早いように見えます。そのためコースを突いた球でも、打たれるケースが目立ちます。腕の振りがよく、球種によっての見分けはつきにくいので、変化球も効果的には使えるはずです。ただ重心が沈み込み過ぎているので、前への「体重移動」が上手く行っておらず、ボールに上手く体重が乗せられていません。そのため球速はあっても、打者の手元まで勢いが落ちないような、生きたストレートが投げられていないのが残念です。

将来の可能性

　ある程度大崩れしない投球はできますが、まだまだ課題も少なくありません。特にスライダーが甘く入るケースが多く、この球を痛打される場面が目立ちました。技術的にも、「開き」の早さや「体重移動」などに課題があり、ボールを速く見せる術に課題を感じます。このへんを改善して行かないと、せっかくのスピードが生かせない可能性があります。地道に課題を克服して、全国大会への切符をぜひ手に入れて欲しいですね。一冬越えた時の成長を期待して、今後も見守ってみたいと思います。